就職活動の際に学生が注目するインターンシップ。
近年のあるインターネット調査によると、学生のインターンシップへの参加割合は、2010年卒業者は51.6%だったのに対して2020年卒業者は86.2%に上昇しており、関心は高まりつつあります。
本記事では、企業が採用活動を行ううえで有効なインターンシップの目的や内容、メリットや注意点について解説します。
インターンシップとは
インターンシップとは、学生が企業などで実習や研修という形式で就業体験する制度です。
ここでは目的や基本的な概要を解説します。
インターンシップの目的(文部科学省の基本的な考え方)
文部科学省は、インターンシップの意義について、学生側と企業側に分けて説明しています。
学生を受け入れる企業側としては、インターンシップの制度を有意義に活用するためにも、どのような目的や意義があるのか再確認しておくことが大切です。
文部科学省によると、企業側の主な目的として、3つを挙げています。
人材の育成
1つ目は「人材の育成」。
学生に企業などでの実務を経験させることによって、実践的な人材に成長してもらうという効果です。
教育界への反映
2つ目として、産業界などのニーズを大学といった教育界に反映させる狙いもあります。
企業の情報発信
3つ目は、企業が学生に対して業界や自社の魅力を発信するという目的です。
特に、知名度の低い中小企業は、学生がその仕事内容や魅力を知らないというケースも多く、人材確保で苦労することもあります。
そこでインターンシップを機会に理解度を深めさせることで、就職を希望する学生を増やすのです。
インターンシップとアルバイトの違い
インターンシップとアルバイトは、その目的が大きく違います。
アルバイトは企業が必要な労働力を確保するために募集しますが、インターンシップは労働力の穴埋めとして学生に業務を手伝ってもらうのではありません。
むしろ、先述のように長期的な人材育成や産業界のニーズの訴求、そして魅力を発信して就職を希望する学生を増やすということが大きな目的があります。
そのため、アルバイトには業務内容を明確にした上で戦力としての活躍を期待するのが普通ですが、インターンシップでは就業体験そのものが主な狙いであるケースも多くあります。
報酬についても、アルバイト人材は報酬目的が普通ですが、インターンシップの学生は必ずしも報酬が目的とは限らないため、受け入れ企業によって報酬の有無も異なります。
インターンシップの時期と期間
インターンシップの時期や期間にはいくつかのパターンがあります。
まず時期については、学生が長期休暇を取れる春休みや冬休みの時期に開催するのが一般的で、これらはサマーインターンやウィンターインターンなどと呼ばれます。
長期休暇中の学生に向けて、充実したプログラムを展開する企業が多く、種類も豊富です。
また、就職活動が解禁される春頃に就職活動中の学生をターゲットに行うインターンシップもあります。
その他、あえて広く学生を呼び込むために通年で開催している企業もあるなど、さまざまです。
期間は短期と長期の大きく2種類に分かれます。
短期のものは1日から1〜2週間程度で、1日のものでは主に会社見学や事業紹介、簡単なワークショップといった内容になることが一般的です。
長期のインターンシップは3カ月から半年といった期間にわたって実施されるプログラムを指します。
学生は、学校の長期休暇を利用したり、あるいは講義の無い日などを選んだりして参加します。
インターンシップの内容
企業はどのようなインターンシップを実施しているのでしょうか。
ここでは、業種別にインターンシップの例を紹介します。
IT・通信業界
IT業界では、仕事の役割やサービスの仕組み、最新動向などを解説するプログラムを用意しているケースがあります。
ITや通信業界は新興企業が多く、BtoBの業態も数多くあるのが特徴。
学生にとっては、仕事内容やビジネスの仕組みについて正確に理解しやすいとは言いづらく、企業側からすると認知度アップには課題があるのが現実と言えます。
そこで、丁寧に仕事内容を紹介したり、学生に業務を疑似体験させたりといったプログラムも多くあるのです。
メーカー
メーカーでは、基本的な業務内容の説明に加えて、工場や設備の見学を組み入れたり、製造や現場業務の体験を取り入れたりといったケースがあります。
メーカーでは研究者やエンジニア人材の争奪戦になっており、各社ともそういった技術人材に興味を持ってもらわなければなりません。
そこで、比較的踏み込んだ現場業務の体験といったプログラムを提供しているケースも少なくありません。
専門商社
専門商社では、商社のビジネスの流れについて学生に理解してもらい、商社パーソンの基本業務である営業の仕事を学ばせるために、研修や業務体験のプログラムを用意しているケースがあります。
例えば、顧客像を想定した上で、商品についての理解を深めセールスポイントを検討し、ショールームを貸し切って模擬販売を行うといった内容です。
インターンシップの給料
インターンシップでは企業が給料を支払わない無給インターンと、給料を支払う有給インターンがあります。
ここでは、それぞれの仕組みや相場について解説します。
無給インターン
無給インターンは、学生に対して給料を支払わない代わりに、インターン内容は業務からやや離れることが普通です。
というのも、インターンシップの内容が実質的な労働であれば、労働基準法によって賃金を支払わなければなりません。
無給である場合は、労働であってはならないため、必然的に実業務から離れる内容になります。
無給インターンの例としては、会社見学や業務説明、グループワークや企画発表会といった、企業の実業務とは直接的に関係のないプログラムが挙げられます。
なお、仕事に対する報酬は無給であったとしても、学生の交通宿泊費や昼食代などは企業側が負担するケースもあります。
有給インターン
有給インターンは、参加した学生に対して実際の業務を任せたり、責任ある役割を与えたりして、学生に本格的な仕事をさせる報酬として給料を支払うというものです。
具体的な内容としては、企画や営業の業務に学生を携わらせたり、社員が業務で使う資料を作成させたりといったものが挙げられます。
学生に一定の役割を任せる以上、数日や数週間ではなく、長期間が設定されているケースが一般的です。
有給インターンの給料は、時給にして1000〜2000円程度が相場とされています。
日給であれば5000〜1万円、成果報酬の場合は1つの作業や成果につき1000円〜5万円程度が目安です。
なお、これは交通費や宿泊費といった支給とは別に支給することになります。
そのため、有給インターンを検討している企業は、ここからさらに多めに見積もる必要があるでしょう。
インターンシップの募集はいつから始めるべきか
先述した通り、インターンシップの開催が増えるのは、学生が長期休暇に入る夏や冬といった時期です。
実際、インターンシップの開催時期は2月と8月にピークを迎えます。
インターンを受け入れるには、受け入れ者の選考や学生側の準備なども考慮して2〜3カ月は空けなければなりません。
つまり、その時点から逆算すると、企業側が募集を始めるのはサマーインターンシップの場合で5〜6月頃、ウィンターインターンシップの場合は11〜12月頃が妥当だと言えるでしょう。
それ以外の時期にインターンを開催する場合でも同様で、1〜2カ月前から募集を開始するのが一般的です。
インターンシップを受け入れるメリットと注意点
企業がインターンシップを受け入れるにはメリットがある一方、気をつけておいた方が良い点もあります。
ここではメリットと注意点について紹介します。
インターンシップを受け入れるメリット
インターンシップを受け入れると、人材の確保につながる効果が期待できます。
先述の通り、インターンシップを通して学生は企業の生身の姿に触れ、実際の業務を体験することも可能です。
そこで、パンフレットや説明会だけではわからなかったような企業の魅力を実感し、入社に強い関心を持ってもらえる可能性があります。
また、採用のミスマッチを防ぐ効果も期待できます。インターンシップでは、学生が企業のことを知るだけでなく、企業側も学生のことを深く知ることができます。
特に長期のプログラムであれば、社員と学生がお互い打ち解けることで、普段であれば聞けないような本音も聞けるチャンスです。
双方を理解しやすいため、採用活動でのマッチングの精度も上がるでしょう。
インターンシップを受け入れる時の注意点
企業側が学生に接する際は、あくまでも対等な立場で接するようにしましょう。
インターンシップでは学生に教育担当者が付いて教育や研修などを行うこともあるため、どうしても先輩・後輩や上司・部下といった上下関係で対応しがちです。
内定者や新入社員に対してはそういった対応でも問題ないかもしれませんが、インターン生は入社したわけではなく、まだ会社を選べる立場だということを忘れてはなりません。
一方、過度に厳しくする必要はないものの、ビジネスの緊張感は持つようにしましょう。
インターンシップは就業体験でもある以上、学生をお客さん扱いし過ぎるのではなく、締めるべきところは締めることが大切です。
適度な緊張感とリラックスのバランスを保つことが良いインターンシップに繋がります。
インターンシップにも対応した人事評価制度の整備を
インターンシップを受け入れる場合、人事評価制度を整備しておくことをおすすめします。
適正な人事評価制度が用意されていれば学生に対するアピール材料になりますし、成果を正当に評価する人事評価の制度、およびシステムが整備されていれば、インターン生を評価する際にも役立つでしょう。
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