時間から成果へ。働き方改革の具体的事例

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(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

現在では労働者の価値観の多様化や、日本の経済の移り変わりにより、旧来の日本型経営が通用しなくなりつつあります。そこで、働き方改革に向けてすでに具体的に取り組みを始めている企業が増えてきています。

具体例を厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」に記載されている働き方改革取組事例から確認していきましょう。

例1 SCSK株式会社

情報通信業のSCSK株式会社(社員数1万1,754名:連結ベース2015年3月末時点)では、「働きやすい、やりがいのある会社」を目指し、以下のような目的をもって働き方改革に取り組みました。

・ 社員の自立的成長の促進
・ 多様な人材の能力を最大限引き出す
・ 業務の効率化・生産性の向上

具体的にはフレックスタイム制を2012年4月に全社導入、7月には裁量労働制も導入し、残業の半減や有給休暇の取得推進を実施しました。また、2013年4月より有給休暇の具体的な目標取得日数や、残業時間の上限値を設定し、その結果削減される残業手当を全額原資とするインセンティブ制度も取り入れました。

加えて、女性の活躍を推進するため、仕事と育児等の両立支援制度の拡充、社員の健康に配慮したリラクゼーションルームや社員食堂の設置、定期健康診断の結果に応じてインセンティブを支給するなどの取り組みを行いました。

2012年度から2014年度までの取り組みの効果は以下のようになりました。

・ 月平均残業時間:26時間10分 → 18時間16分
・ 年平均年次有給休暇取得日数(率):15.3日(78.4%)→ 19.2日(97.8%)
・ 女性管理職数:13名 → 43名(※2015年度は54名)
・ 育児休業取得者数:163名→ 208名
・ 両立支援休暇利用者数:449名→ 621名

SCSK株式会社の取り組みで特筆すべき点は、残業代を削減したかわりにインセンティブを導入し、労働者の収入は減らさないように工夫した点です。社員の働く意欲を刺激した働き方改革といえるでしょう。

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例2 東レ株式会社

製造業の東レ株式会社(社員数7,232名:2015年3月末時点)では以下のような目的をもって働き方改革に取り組みました。

・ 多様な就労観・家庭事情を持った社員が生産性高く働ける環境の整備
・ ワーク・ライフ・バランスの充実

東レ株式会社は、1991年に労働組合から時短要求を受けたことをきっかけに、働き方改革に乗り出しました。業務遂行プロセスの抜本的見直しや、無駄を排除したトータルコストの削減、上司と部下の個別面談の実施などを行いました。

さらに、2008年からは時間外労働や、休日出勤の削減のための委員会を設け、全社で取り組みを促進しています。具体的には21時以降の一斉消灯、全社一斉早帰りデーの設定、各部署別の時間外労働実績の報告、長時間労働者に対する健診や改善計画の立案・フォローなどが実施されています。

有給休暇に関しても、子供の養育、家族の介護、不妊治療を受ける際に取得可能な半日年休制度の回数を増やしたり、在宅勤務制度などを導入したりして、ワーク・ライフ・バランスの充実を図りました。

その結果、2014年度の実績は以下の通りです。

・総労働時間:1,914 時間
・有給取得日数:17.2 日(87.6%)

2014年度の長時間労働の基準が、年間2,200時間ということをふまえると、取り組みは非常に効果を発揮していることがわかります。また、面談によりPDCAサイクルの実施を推進したことで、業務遂行の効率が高まったといえます。

例3 アステラス製薬株式会社

製造業のアステラス製薬株式会社(社員数1万7,649名:2013年度末時点、連結)では以下のような目的をもって働き方改革に取り組みました。

・ 時間ではなく役割と成果での評価
・ 女性が働きやすい環境の整備
・ 人事や企業風土の社外での評価

アステラス製薬株式会社では、人事評価を時間ではなく、役割と成果で行うことを厳格化し、さらに裁量労働制を導入することで社員の意識改革に取り組みました。また、勤務時間や出張時間などを上司と部下が共有することで、労働時間をチェックする体制を整えました。

その他、金曜日には所定労働時間が1時間45分短縮されるFFデーが導入され、労働時間が長引いてしまう社員には状況確認やフォローが行われる仕組みをつくりました。さらに、データの管理者には徹底した研修を行い、所定外労働時間を削減させる意識付けを心がけています。

その結果として、2013年度の状況は以下のようになりました。

・ 年次有給休暇の取得実績:46.8%

また、FFデーの取り組みにより、総労働時間を削減しつつ成果が落ち込んでいないことや、時間軸の評価から成果の評価にシフトしたことで、目標管理制度をより活かせるような運用が可能となりました。

アステラス製薬株式会社は、社員の意識改革を徹底することで、働き方にプラスの影響を与えることに成功したといえるでしょう。

求められる働き方改革

少子化の影響もあって現在は売り手市場であり、各企業は人材の確保に奔走しています。その取り組みの一環として働き方改革が必要不可欠であり、具体的には労働時間ではなく役割や成果への評価制度が求められています。今後は日本だけではなく世界に認められるためにも、ますます制度の根本的な見直しが進められていくでしょう。

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