働き方改革に関連する2017年のニュースまとめ

(写真=Arthimedes/Shutterstock.com)

政府が2017年3月に「働き方改革」実行計画を発表して以来、多彩な企業や団体による先進的な働き方改革に向けた取組みが連日のようにニュースとなっています。自身のキャリアや職業人生について主体的に考え、実現していくキャリアデザインは多様化。働き方の変化が新しいニーズやビジネスを次々に生んでいます。今後、一層目まぐるしく変化するであろう働き方を巡る社会で、本格化していく働き方改革の動きや流れを振り返ってみます。

働き方改革実行計画

2017年は、「働き方改革」元年と言えます。安倍首相が自ら議長となって進める「働き方改革実現会議」は、アベノミクス成長戦略を支える大きな柱として位置づけられています。今後、国会での各種法改正などを視野に入れた具体的な方策が示されます。政府主導で進められている「働き方改革」のポイントを、まず抑えておきましょう。

働き方改革実行計画で抑えるべきポイント

同一労働同一賃金
全雇用者の約4割を占める非正規雇用の待遇改善が目的。正規雇用者との間にある大きな待遇差で今後、賃金格差の改善をはじめ、教育訓練や福利厚生などを含めた労働環境の改善を目指す。具体的には労働契約法、労働者派遣法、パートタイム労働法の改正が検討される予定。

賃上げと労働生産性の向上
全国の最低賃金引き上げで全国加重平均額1,000円を目指し、中小企業や小規模事業者の生産性向上などの支援や改善。下請け法運用基準は既に改定され、金融機関との連携強化や企業への助成制度を設ける。

長時間労働の是正と残業の上限規制
時間外労働の限度に罰則を設けるなど、具体的な法改正を目指す。前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に、一定の休息時間を確保するインターバル制度を普及させ、パワハラ防止やメンタルヘルス対策も強化される。

テレワーク、副業や兼業などの柔軟な働き方
在宅勤務のほか、サテライトオフィスなどを包括したテレワークの導入を支援。非雇用型テレワーカーへのセーフティネット整備、教育訓練などの拡充や副業・兼業を推進する。

女性や若者の活躍を目指す
不就労や非正規労働を選ぶ女性や非正規で働く若い世代の人材育成、活躍できる環境の整備が目的。教育訓練の拡充のほか、雇用保険法の改正、配偶者控除などの見直し、女性活躍推進法や若者雇用促進法に基づく制度を促進する。

治療、子育てや介護と仕事の両立
治療しながら働く人のために、主治医や会社・産業医と両立支援コーディネーターのサポート体制を目指す。子育て支援では保育士の処遇改善や保育・学童サービスなどの充実、介護支援では介護人材の処遇改善、男性の育児・介護への参加を目指す。

就職や転職の支援、格差のない教育
キャリアアップの道筋を変え、本業以外のキャリア促進や再チャレンジ社会の実現が目標。人工知能(AI)などを念頭に、求められる能力や知識、技術、資格、平均年収などの総合情報を提供する日本版O-NETの創設を図る。

多彩な人材の活用
高齢者や外国人のほか、障害者の就業促進、子どもたちが家庭の経済事情に関わらず未来に希望を持てる社会の実現など、多彩な人材が活躍できる社会を目指す。

2017年4月からの「働き方改革」関連ニュースのまとめ

【4月】

3日 在宅勤務制度導入 マンダム
小学生までの子どもを持つ社員約200人(社員の3割)を対象に、月5回まで取得できる。

4日 テレワーク制度導入 森永製菓
約1,000人の正社員が対象(工場勤務を除く)。1ヵ月に8日までを上限に自宅などオフィス以外での勤務を認める。

5日 ノー残業デーは午後5時に閉館 味の素
東京本社で平日の閉館時刻を従来より1時間早い午後7時へ。毎週水曜日のノー残業デーは午後5時に閉館する。

11日 「将来推計人口」を公表 厚生労働省 国立社会保障・人口問題研究所
50年後の人口は8,808 万人。15歳~64歳の人口は7,728万人から4,529万人となり、働き手は約4割減。

12日 「旭川など5市に「マザーズ・キャリアカフェ」を設置 北海道
子育てしながら働く女性を支援する。カウンセラーがライフステージに応じた働き方などを助言する。

21日 テレワーク制度導入 富士通
全社員約3万5,000人を対象に「テレワーク勤務制度」を正式に導入。

残業上限規制で事業に支障が出る企業は約4割 ロイター企業調査
新導入の残業上限規制で、事業に支障が出ると約4割の企業が回答。非正規雇用の待遇改善などで労働コストの増加は5割が回答。

「休日労働の抑制」を努力義務の方針 厚生労働省
残業時間の削減を盛り込む労働基準法の指針(ガイドライン)で、休日労働の抑制を努力義務として明記する方針。3月に政府がまとめた働き方改革実行計画では、年間の残業上限720時間などに休日労働分が含まれないため新たなルールを設けて対応。強制力はないが、企業などを指導へ。

【5月】

11日 働き方改革の見直しに取り組む企業へ奨励金 埼玉県
男性の育児休業に加え、有給休暇の取得、残業の削減、在宅勤務の導入など新たに3項目に成果目標を設定。達成企業に10万~30万円。

22日 全社員5,000人対象にテレワーク NECネッツエスアイ
自宅や外出先などオフィス以外での勤務を認める「テレワーク」を全社員5,000人を対象に7月から始める。制度の利用回数に制限なく、数千人規模の企業が全社員を対象にテレワークを導入する例は珍しい。

24日 キッズウイーク導入を表明 政府・教育再生実行会議
学校で夏休みなどの長期休暇をずらして大型連休とし、大人も休むことで有給休暇を促進する「休み方改革」を進める。2018年4月から導入予定。

25日 「TOKYO 働き方改革宣言企業」制度を創設 東京都
「働き方改革宣言」を行った都内の企業に助成金の支給や専門家によるコンサルティング支援などを行う。

31日 兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集 経済産業省
兼業・副業を実践している働き手や兼業・副業を容認する企業の創業・新事業創出の事例を取りまとめ。パラレルキャリアの促進を目指す。

【6月】

5日 高知・安田町、遠隔オフィスを地方に設置する実験を開始 内閣府
小規模なサテライトオフィスの地方設置に向けた実証実験を高知県安田町で始めた。東京中心の国家公務員の勤務地で自由度を増やして地方で働くための課題を検討。

30日 2016年度国土交通白書を公表 国土交通省
2016年を「生産性革命元年」と位置づける国交省の白書。2050年に望む働き方について1,500人を対象に尋ねたアンケートで、52%が「自宅勤務を希望する」と回答。

【7月】

4日 11時間の「インターバル制度」導入 サッポロビール
営業担当者の長時間労働解消に向けて「インターバル制度」を導入。就業から始業までに欧州水準並みという11時間の休息時間を義務付けるもの。業界全体への波及効果が今後注目される。

12日 電通の違法残業が正式裁判へ 東京簡裁
社員に違法残業をさせたとして、電通が労働基準法違反罪で略式起訴された事件で、東京簡裁が正式裁判を開くことを決定。違法残業事件が公開の法廷で審理されるのは異例。

14日 厚労省の男性職員の育休取得率が3割超 厚生労働省
2016年度厚労省の男性職員の育児休業取得率が、過去最高の34.6%に。日本の男性の育休取得率は約3.16%で、2020年までに13%まで引き上げる目標を政府は掲げている。

16日 フリーで働くプロ人材の労働環境、独禁法で改善へ 公正取引委員会
企業と雇用契約を結ばずに働くフリーのプロフェッショナル人材の労働環境改善に向けて、公正取引委員会は独占禁止法を活用する方針。

19日 治療と仕事の両立支援へ新組織 東京労働局ほか
病気の治療と仕事の両立を支援するため、東京労働局や都内の経済、医療関係者らでつくる「東京地域両立支援推進チーム」が設立。企業や労働者に対して情報提供や相談支援などを行う。

21日 経済財政白書 働き方改革の一層の推進を 内閣府
2017年度の経済財政白書で「働き方改革」が経済や国民生活に与える影響について分析。長時間労働の是正、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、柔軟な働き方の導入など生産性の向上、多彩な人材の労働参加、消費の活性化に繋がるとして、一層の取組みを求める。

【8月】

2日 裁量労働の対象を拡大する方針 トヨタ自動車
法律の定める範囲より職種や役職を広げ、月45時間分の残業代のほか、超過分も追加支給。一般職4,200人を対象に在宅勤務制度も設ける。新制度導入は12月の予定。

10日 遠隔勤務の労働管理に新指針策定へ 厚生労働省
テレワークを導入しやすい労働管理の新たな指針をつくる。携帯電話を用いたカフェやシェアオフィスでの勤務など、多様化するテレワークの勤務時間や労務管理を明確化する狙い。

11日 無期雇用へ切り替え続々 人材派遣各社
派遣社員を無期雇用契約に切り替える動きが相次ぐ。改正労働契約法で2018年4月から、勤続年数5年超の有期雇用契約社員は無期雇用を申し入れることが可能へ。人手不足の中、人材派遣各社は有期雇用への希望で人材を確保。

28日 建設・運送業の働き方改革へ指針を公表 政府
長時間労働の是正が急がれる建設、運送業の働き方改革で指針を公表。2018年度予算の概算要求に関連施策を盛り込む見込み。

【9月】

1日 公務員の定年を段階的に65歳に延長へ 政府
現在60歳が定年の国家公務員と地方公務員を、65歳までへの延長を検討。2019年度から段階的に引き上げへ、年度内に取りまとめ。民間への波及効果も狙う。

8日 働き方改革法案で要綱、残業時間の上限規制など盛り込む 厚生労働省
働き方改革関連法案の要綱を厚労相の諮問機関「労働政策審議会」に諮る。残業時間の上限規制や同一労働同一賃金の実現、一部の専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度の導入などを盛り込んで関連法の改正案を一本化。施行日は原則2019年度だが、中小企業は同一労働同一賃金制度の適用に1年間の猶予。

19日 2016年「パートタイム労働者総合実態調査 厚生労働省
正社員とパート双方を雇用する事業所のうち15.7%が「正社員と職務が同じパートがいる」と回答。パートタイムで働く人がパートを選んだ理由は「自分の都合の良い時間(日)に働きたい」が最多で、72%は「今後もパートで続けたい」。

29日 2017年版労働経済白書 厚生労働省
長時間労働の割合は減少傾向にあるが、依然週50時間以上働くが2割、うち週60時間以上が1割超。企業の9割が残業削減へ取組むが、「実際に残業時間が短縮された」の回答は5割で、現状の効果が限定的であると指摘。

【10月】

1日 全社員に在宅勤務制度を導入 三菱UFJモルガン・スタンレー証券本社所属の全社員を対象に在宅勤務制度を導入した。

4日 NHKの女性記者(31歳)が2013年に残業月159時間で過労死
当時31歳のNHK(日本放送協会)女性記者が2013年7月に過重労働が原因のよる心不全で死亡していたことが表面化した。ピーク時には残業が月159時間に及び、翌14年に渋谷労働基準監督署が労災認定していた。遺族が今夏以降、NHK に再発防止を強く要望したことで公になった。

6日 電通に違法残業事件で罰金50万円 東京簡裁
社員に違法残業をさせたとして、電通が労働基準法違反罪に問われた事件で、東京簡裁は同社に対し、求刑通り罰金50万円の判決を言い渡し。同社社員の過労自殺が「働き方改革」をめぐる世論に大きな影響を与え、労基法違反事件では異例の正式裁判となった。

7日 国内最大級の都立小児病院で残業代1億2千万円未払い Bottom of Form
国内最大級の小児病院で知られる東京都府中市の「都立小児総合医療センター」で、約80人の医師や職員計約130人に対する2014年3月から2年間の夜間や休日勤務の残業代が未払いだったことが発覚。立川労働基準監督署から昨年3月に是正勧告を受け、今年6月までに未払い残業代計約1億2千万円の全額を支払った。

12日 企業型保育所を増設、拠出金引き上げで調整へ 厚労省、財務省
従業員向けに設置する「企業主導型保育所」を増設し、2018年度に最大2万人分を整備する方針。企業負担の拠出金引き上げで必要な財源を確保する。

【11月】

20日 会社員の給与所得控除を縮小へ 政府税制調査会
所得税改革の一環として給与所得控除を見直し、基礎控除へ近づける中間報告。フリーランスなどで働く場合に適用される基礎控除に比べ、恩恵が多い給与所得控除との不公平感をなくすのが目的。所得額次第で会社員の税負担が増える可能性。

モデル就業規則で副業認める改正案 厚生労働省
厚労省が公開する企業が就業規則を制定する際のひな型「モデル就業規則」で、副業を認める改正案を有識者検討会に提示。現在、原則禁止としている副業について、事前届出で可能とした。企業の就業規則へ転用する例が多く、副業可とする企業の増加を狙う。

【12月】

23日 アリさんマークの引越社が「ブラック企業大賞2017」に決定
今年最もブラックとされる企業を認定する「ブラック企業大賞2017」が行われた結果、アリさんマークの引越社で知られる「引越社・引越社関東・引越社関西」が大賞に選ばれた。その他、日本放送協会(NHK)がWeb投票賞。部門賞では、新潟市民病院が業界賞、大成建設・三信建設工業が特別賞、ゼリア新薬工業がブラック研修賞となった。

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