人事評価後のフィードバックの目的は、人材の育成です。会社の生産性の向上のため、社員の能力および成果を適正に見極めるとともに、それらをさらに引き出せるよう、社員を成長させてゆくことを役割とします。フィードバックは重要な業務です。いくら適切で公平な人事評価を行っても、社員が次のステップや目標を達成できるための方法を伝えないのであれば、それは単なる査定と変わりません。上司や人事が注意すべきフィードバックのポイントを考えてみます。
適切なフィードバックとは
適切なフィードバックとは、面談の過程で上司と部下が成果や課題をお互いに提供し、相互の信頼関係を築いた上で、今後の方針や目標を考えて共有するものです。
ところが、現実に中小企業などでは適切なフィードバックが行われていないケースが散見されます。フィードバックと言いながら実態は、社員個人の人間性の否定や単なる叱責の場と化していては、フィードバック本来の目的である人材の育成にはつながりません。
その理由として、社内にフィードバックの経験者が不在で、具体的に何をどうすれば良いのか分からないということが挙げられます。
事前に準備することは?
フィードバックを行うには、上司・人事は事前に、人事評価の結果に基づいた事実や情報のほか、当該社員と話し合うべき事柄やその理由をまとめておき、端的に伝えられるように準備しておきます。なお、フィードバックにかける時間は、社員1人につき、30分から最大1時間程度が目安です。
準備ができたら、フィードバックを行う日時と場所を決定します。当日は、忌憚なく話せるよう、社員のプライバシーを保てる場所を選んでおきましょう。
フィードバックの面談当日の流れ
フィードバックの面談当日は、最初に部下から今期の自己評価を聞き出します。その際、部下の話は最後まで聞くようにすべきです。相手の話にしっかりと耳を傾ける姿勢が、相互の信頼関係の構築へとつながります。
部下の話を聞き終えましたら、次いで上司から部下に人事評価の結果を伝えます。評価シートを見せるかどうかは企業によって異なります。部下の成果を伝える時、まずはプラスの評価から始めましょう。そうすることで部下の心も和らぐため、その後のフィードバックがスムーズに進めやすくなります。
プラス評価の後にはマイナス評価について説明します。社員の育成を通じて業務効率の改善と向上を目指すフィードバック面談において、この点が最も重要なものとなります。
マイナス評価を伝える際、注意すべきこととして、日常において上司が何度も指摘し、指導していた内容と伝えるべき評価にズレがないことが求められます。また上司・人事側は、具体的な事実や内容を示し、それをどう判断し、評価したかの理由や根拠について詳細に説明しなければなりません。この説明がしっかりできないと部下がマイナス評価を納得しないおそれが生じます。場合によっては上司や人事の主観に過ぎないと判断され、これまで築いてきた上司への信頼をも失いかねません。
フィードバックを行う上司・人事側は、本来の目的を踏まえ、間違っても不誠実な言動や無責任な発言、事実の誤認、見落としなど、部下の人事評価に対する信頼を覆すことにならないよう細心の注意を払うことが大事です。
フィードバックの目的は人材育成と生産性の向上
面談で評価を伝えた後は、最終ステップとして「今後の目標」や「来期からの行動」、「キャリアアップにつながる方法」などについて話し合います。マイナス評価については、「課題の改善策の提案」をしたり、「どうプラスに転じるか」を一緒に探ったりすることが求められます。また、社員の育成を目指すには「部下の将来の方向性」や「目指すべきキャリア」も議題に掲げ、そこからさらに「今後に必要なスキル」などについても話し合うことも不可欠です。
人事や上司はフィードバックを通して社員が成長し、目標に近づけるように、これまでの経験や蓄積されたデータなどから、部下に対して適切なアドバイスやサポートを行うものです。そのために人事や上司に求められる能力や技術は、まずは的確な情報収集力です。加えて多岐にわたる事実を要点にまとめ、社員に適切に伝える表現力も欠かせません。
個々の社員を成長させ、育成する方法に関して確固たる正解はありません。時間や労力は求められますが、フィードバック本来の目的から外れることなく、適切に実践を続ければ、長期的には社員ひいては企業そのものにも大きな成果や業績が返ってくることになるでしょう。
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