日本でも徐々に普及しつつある「ソーシャル・エンタープライズ(社会的企業)」が抱える人材不足という課題の解決に向け、革新的なHR戦略が求められています。
ソーシャル・エンタープライズが注目を集めている理由
活動内容や事業内容を問わず、CSR(企業の社会的責任)の一環として様々な社会問題に取り組んでいる企業を「ソーシャル・エンタープライズ(社会的企業)」といいます。NPOなど非営利目的のイメージが強いかも知れませんが、実際には経営やビジネスを通して社会に貢献しているソーシャル・エンタープライズも多数存在します。
ソーシャル・エンタープライズは雇用を創出し、利益を事業や従業員、地域社会、環境などに再投資することで、社会的問題への取り組みや人々の生活および教育水準の向上、雇用創出、地域社会や環境などの支援を行っています。
かつては公的支援や寄付を資金源としていた活動のために新たなビジネスモデルを構築し、事業として社会問題に取り組むという潮流は、世界中で拡大しています。
社会的企業の定義
社会的企業の定義は様々な機関が公表していますが、その内容はそれぞれ差異があります。
例えば、日本の内閣府における社会的企業の定義には、「利益は活動継続のために投資」「社会的・環境的な課題に対して新しい方法で解決する」「公共サービスや政府のやり方を支援する」といったものがあります。他にもいくつかありますが、営利を目的とせず、社会的課題に貢献することがポイントとなっています。
貿易産業省中小企業局は、それに加えて「製品やサービスを提供し、その対価として金銭を受け取っている」「25%以上の賃金を企業活動から獲得する」など、お金の使い方に関する条件が増えています。
一方、ロンドンの定義はまた異なり「営業上の利益を生み出していくことを追求する」「利益は配当として関係者に分配するか、社会利益のために使用する」など、利益の追求や分配について言及している点が特徴です。
大手企業も積極的に関与する
ソーシャル・エンタープライズ先進国の米国では、大手企業も社会的事業に積極的に関与しています。
フォーチューンで「世界で一番働きがいのある企業」に選ばれた セールスフォース・ドットコムの例をみてみましょう。同社はコーポレート・フィランソロピー(企業慈善事業)の一環として「1-1-1 Model」という社会貢献活動を行っています。これは自社株・製品・従業員の就業時間の1%を社会に還元するという活動で、過去18年間で社会に還元したコミュニティーサービス時間は320万時間、助成金は総額2.3億ドルにのぼります。
また従業員は7日間のボランティア有給休暇を利用するなど、慈善活動への自発的な参加を促進しています。
こうした環境はマーク・ベニオフCEOが掲げる「利益より遥かに尊い目的をもった企業に成長する」という理念を、力強く体現するものです。
その他の社会的企業の例
続いては、社会的企業の実例を3つ紹介しましょう。
ベン&ジェリーズ
アイスクリームメーカーのベン&ジェリーズは、1978年にアメリカで誕生した社会的企業の草a分け的存在です。創業当初から「アイスクリームを通じて、社会を良くしていく」という使命を抱いており、財団「BEN&JERRY’Sファウンデーション」を立ち上げて、年間売上の7.5%を非営利団体に寄付しています。
株式会社ボーダレス・ジャパン
同社は「ソーシャルビジネスで世界を変える」を使命とする社会起業家によるプラットフォームカンパニーです。国際協力や環境問題といった社会課題の解決を目指し、多国籍コミュニティハウスの運営やオーガニックハーブで貧困農家の収入アップを図る取り組みなど、多くの社会的事業を展開しています。
株式会社LIFULL
「あらゆるLIFEを、FULLに」というメッセージが社名の由来となっており、社会的課題だけでなく個人の抱える課題の解決を目指すソーシャルエンタープライズです。主要サービスである住宅情報サイトをはじめ、空き地の再生を軸とした地方創生や、シニアの暮らしに寄り添う介護事業などを提供しています。
ソーシャル・エンタープライズのためのHR戦略
社会的事業活動を主とするという背景のせいか、多くのソーシャル・エンタープライズが労働慣行に関する法令を遵守する一方、HR戦略という点では従来の企業と比べて積極性が欠けているといわざるを得ない現状です。
社会貢献という尊い使命の裏側では、低報酬や成長の機会の欠落、中間管理職における才能の保持など、重要 な人的資源に関わる問題を抱えており、人材不足 が最大の課題として挙げられています。
しかし非営利・営利に関わらず、社会的事業活動の源が人材である事実に変わりはありません。言い換えるとビジョンと価値を共有できる人材を確保・育成できるかどうかが、成功の決め手となります。
ソーシャル・エンタープライズが雇用創出の手段として拡大している欧米とは対照的に、日本では福祉的就労の域にとどまる傾向が強いようです。こうした状況で適切な人材を確保し組織の成長を促すためには、革新的なHR戦略が必要です。
効果的なHR戦略
1.明確なHR戦略
社会的事業活動の基盤作りにあたり、HR戦略・方針・手順・プロセスをしっかりと構築しておくことは、非常に重要なファーストステップです。「どのような社会問題に取り組むのか」という課題を綿密に検討し、解決に向け必要な役割や人材を確保する手段や人事方針を整備します。
2.ブランド構築による組織の信頼性の向上
競合との差異化として活用される「企業のブランディング」は、優秀な人材を惹きつけ定着させる効果的な戦略でもあります。ソーシャル・エンタープライズとして自社のミッションやビジョンをブランド化することが、組織の信頼性の向上にも役立ちます。
3.成長の機会の提供
ソーシャル・エンタープライズをひとつの企業あるいは組織ととらえると、従来の企業や組織のHR戦略を応用しないという手はありません。
例えば自社のビジョンと価値を共有するスタッフが成長できる機会の創出は、定着率を高める効果を発揮します。育成プログラムやスキルアップワークショップなどを通し、スタッフの向上心を継続的に刺激する環境作りが大切です。
近年はCSRに関心の高い営利企業も増えていることから、今後ソーシャル・エンタープライズとのコラボレーションが活発化するものと予想されます。そうした観点からも、多様な領域で才能を発揮できる人材の確保・育成は優先事項となるでしょう。
社会的企業の運営ではHR戦略が重要
社会的企業は、重要な社会課題の解決を目指すという使命を担っている一方で、様々な人材資源に関する課題を抱えており、慢性的な人手不足にあるケースが多くなっています。事業活動の基盤を安定させるためには、革新的なHR戦略の構築が必要不可欠です。
使命の実現に向けて、多様な人材を採用・育成できる社内体制を整備していきましょう。
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