近年、企業の存続を揺るがすような不祥事や事件がマスコミを賑わしています。SNSの発達、業務や取引手法の複雑化など、めまぐるしく変化する社会環境の中、不祥事や事件は他人事ではなく、どの企業にも起こり得る問題となってきました。
企業を取り巻くリスクが時代と共に多様化するなかで、これまで以上に「リスクマネジメント」の必要性、重要性が叫ばれています。ここでは、ビジネスパーソンが知っておきたい企業のリスクとリスクマネジメントについてご紹介します。
リスクとは?
リスクという言葉は多くの場合、危険性などマイナスな結果が発生する可能性を表す時に使用されます。しかし、一方でリスクという言葉にはプラスとマイナスの両方の結果が発生する可能性を表すという意味も含まれています。では、具体的にリスクとはどのようなものなのでしょうか。
純粋リスクと投機的リスク
リスクの分類方法として一般的に用いられるものに「純粋リスク」と「投機的リスク」の2つがあります。純粋リスクとは、火災や地震、気象災害、テロなど、企業に損害や損失のみをもたらすリスクをさします。
一方の投機的リスクとは、投資や金利変動、新商品開発など企業に損失と利益のどちらの可能性ももたらすリスク のことで、ビジネスリスクとも呼ばれています。
企業を取り巻くリスク
具体的に企業を取り巻く代表的なリスクには下記のようなものがあります。
- 自然災害リスク(地震、水害、異常気象など)
- 法的リスク(社員の不正行為、脱税、粉飾決算など)
- 製造物責任リスク(製品の欠陥、リコールなど)
- 金融リスク(為替相場の変動、現預金等の管理ミスなど)
- 環境リスク(自社製品における環境汚染など)
- その他リスク(ビジネス戦略リスク、労務リスク、財務リスク、政治リスク、社会リスクなど)
リスクマネジメントとは?
上記のように企業は様々なリスクに直面しています。そこで重要になってくるのが、「リスクマネジメント」です。リスクマネジメントとは、リスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失等の回避または低減を図るプロセスのことです。
では、ビジネスワードとしてよく耳にする「リスクヘッジ」や「クライシス(危機)マネジメント」と違いはあるのでしょうか。
リスクヘッジとの違い
リスクヘッジとは、起こりうるリスクを予測し、そのリスクを回避、低減することです 。つまり、リスクヘッジとは、1つ局面のリスクを回避することをさします。一方のリスクマネジメントとは、リスク全体を把握し、そのプロセス等を予測し管理するものをさします。
クライシス(危機)マネジメントとの違い
クライシスマネジメントとは、企業が事業継続や組織そのものの存続を脅かすような危機的状況に直面した際に、組織としてその被害を最小限に抑えるために行う一連の活動および対処法のことです。
つまり、損失が起こってしまった事後に対応するのがクライシスマネジメントであり、予測される損失に事前に対応するのが、リスクマネジメントです。
リスクマネジメントのプロセス
一般にリスクマネジメントのプロセスは、次のステップにて実施されます。
- リスクの発見・特定
リスクがどこに存在するか、規模や影響度、影響範囲などを把握する - リスクの算定・評価
リスク発生の確率や影響度を定量的に測定し、比較評価できるようにする - リスク対策を選択する
リスクに対してどのような対策(回避、低減、許容、移転など)をとるか選択する - 実行
選択したリスク対策を実行する - 再評価
時間経過と共に変化する環境下でリスクマネジメント対策の有効性を再評価する
これからの時代に求められるリスクマネジメント
これまでのリスクマネジメントでは、主に会社に損失を与えるリスクを減らすことが重要視されてきました。しかし、このようなリスクマネジメントのみでは、従業員の挑戦意欲や向上心を低下させてしまう恐れがあります。
変化の激しい現代社会においては、リスクを損失としてのみ捉えるのではなく、新しいビジネスチャンスへのチャレンジと捉えることが重要です。そのために、損失は最少に、収益を最大にするためのリスクマネジメントが企業には求められます。
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