戦後に始まった高度経済成長の時代から近年までの働き方といえば、
私生活を犠牲にして仕事を最優先するスタイルが主流だったのではないでしょうか。
しかし最近ではサービス残業や過労死(過労自殺)等の問題が報道などで取り上げられ、
国全体で「働き方改革」が推進されるようになってきました。
日本におけるこれまでの働き方を振り返ると共に企業の働き方改革の事例を紹介し、
働き方の未来を考察していきます。
高度経済成長期の働き方
高度経済成長期の時代は、現在と比較して労働時間が長く 、多くの労働者が朝から夜遅くまで働いていました。この時代は終身雇用、年功序列が制度として力を持っており、与えられた仕事をこなしていれば、ある程度の年月が経つ頃には昇進と昇給が約束されていたのでしょう。
日本は高度経済成長期に発展を遂げてきました。その後バブルが崩壊し、少子高齢化も進んで、経済発展への期待ができなくなってしまった現代。会社に求められるまま長時間労働をすることは、様々な問題を生む結果となってしまいました。
このような背景から、現代では長時間労働や会社での出世をそれほど重要視しない考え方も増えてきたのではないでしょうか。
浮き彫りになってきた労働問題
近年ではインターネットやSNSの普及によって様々な業界、会社の実情を知ることができるようになりました。「カイシャの評判 」や「Vorkers (ヴォーカーズ)」等の様々な企業の口コミサイトが登場し、現在働いている社員から退職済みの社員まで、福利厚生や年収等の情報を書き込むことができ、就職活動中の人が参考にすることができます。
ニュースで過労死や過労自殺、ハラスメント等の問題が取り上げられるにつれ、長時間労働やサービス残業、セクハラやパワハラといった労働問題も浮き彫りになってきました。
また、これまでは育児や介護、病気等で長時間労働ができない人など、様々な事情を抱えている人は退職せざるを得ない人もいました。
こうした問題の対策として2016年9月に内閣官房に「働き方改革実現推進室」が設置されました。この「働き方改革」では就業機会の拡大や個々の能力を発揮できる環境作りのため、働く人が置かれているそれぞれの事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することを目指しています。
改革の1つとして、2019年4月から年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して年5日の取得が義務付けられるなど、労働基準法の改正が行われました。
このように少しずつ企業と労働者の関係も見直され始めています。現実的に困難な課題もありますが、それぞれに合ったスタイルでの働き方の実現が求められています。
企業の働き方改革の事例
多様な働き方が求められる中で、企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
企業の働き方改革の事例を紹介していきます。
事例1:味の素株式会社
味の素株式会社では、育児や介護等の様々な事情がある人が成果を発揮し働くことができるようにするため、どこでもオフィスと呼ばれる制度を2017年4月から導入しました。
この制度は全従業員が対象で、自宅やサテライトオフィスでの勤務が可能となりました。
こうした取り組みの成果として、2017年度の全社の一人当たり平均総実労働時間が前年度比74時間のマイナスとなり、1,842時間になりました。更に2018年度には1,800時間を目標としています。
終業時間にも変化が見られ、2017年4月~10月の平均終業時間は16:00~18:00の割合が
前年から25%増加し75%になりました。従業員は終業時間が早くなったことでできた時間を趣味や家族との時間などに使っているそうです。
事例2: テルモ株式会社
医療機器、医薬品を製造販売するテルモ株式会社では、がん治療と就労の両立を支援する様々な制度を2017年1月から導入しています。
例えば、失効した年次有給休暇を治療のために利用可能な「失効有給の1日単位利用」の制度や「短時間勤務」(1日最大2時間まで短縮可能)、「時差勤務」(始業・終業時間を1日最大2時間まで繰上げ、繰下げすることが可能)などの制度があります。治療中の従業員は体調の様子を見つつ、こうした制度を利用して仕事との両立を図っています。
また、治療中の従業員を通じて産業医と主治医が情報を共有し、最適な形で治療と就労の両立を支援する取り組みも行われています。健康をテーマとした社内セミナーの実施や人間ドック等の受診補助、二次検査費用の全額補助など病気の予防や早期発見のサポートにも力を入れています。
こうした両立支援制度を定着させるためには、制度の非対象者を含めた社員全体の制度への理解が重要なので、同社では経営トップがその意義や必要性について発信し、理解の促進を図っています。
働き方が多様化する時代へ
日本全体で取り組む働き方改革は、現状では発展途上段階ですが、会社だけでなく自分に合った働き方が選択できるよう少しずつ変わり始めています。
将来的には様々な立場や状況の人が、無理なくライフスタイルと両立して働き続けられる環境の実現に期待が寄せられています。
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