厚生労働省は2017年度から、社員の能力や仕事の成果を賃金に反映させる人事制度を導入した企業に対し、最大130万円の助成金を出す制度を新設します。政府が掲げる働き方改革の一環で、年功序列型の賃金制度に縛られていた日本企業の風土に風穴を開けようとする動きです。
いったいどのようなポイントをクリアすれば、この助成金は企業に支給されるのでしょうか。助成金を獲得できれば、社員の働き方を大事にしている企業として採用の際のアピールポイントにもなるため、経営者や人事制度の担当者はぜひ注目したいものです。
助成金の概要
新しい助成金は雇用保険の積立金を活用し、旧来型人事システムの改正を通じて個々の社員の生産性を向上させ、円滑な賃上げや離職率の低下につなげる狙いがあります。新制度では、仕事の評価を賃金に反映させる制度を設けた企業にまず50万円が支給されます。
さらに1年後、1. 生産性に一定程度の改善がみられる、2. 離職率が数ポイント低下している、3. 賃金が2%以上増えている、という3点を満たしていれば、追加で80万円が支給されます。
指標については、これまで労働関係助成金の申請において使用されていた、以下の考え方に基いて設定されることが推測されます。
「生産性」については生み出した付加価値(営業利益、人件費、減価償却費、動産・不動産賃貸料、租税公課の合計額)を雇用保険被保険者数で割って算出します。この数値が申請を行う3年前より6%以上伸びていると「一定程度の改善」とみなされると思われます。人件費の中には社員の研修費や教育訓練費を含めることはできますが、社員の退職金や役員の退職慰労金、出張旅費のほか派遣社員への外注加工費を計上することはできないと見られるので注意が必要です。
厚労省は初年度、7,800社に本助成金を支給できる予算を計上しています。
社会的背景
日本企業はこれまで、年功序列型賃金を採用しているところが多数派でした。この制度の下では、勤続年数に応じて能力も上がるという前提に基づいて給与が支給されます。
しかし、社員の能力や成果に対する評価があまり考慮されてこなかったことも事実です。優秀な社員なのに年齢が若いという理由で、働かない年配社員のほうが何倍ももらっているということが頻発していました。こうしたことが、多くの若手社員からやる気を奪うことにもなっていました。
生産年齢人口が減少するなかで経済を成長させていくには、個々の労働者が生み出す付加価値を高めることが不可欠です。助成金の新設は、企業が社員の働く意欲を引き出し、生産性を向上させるシステムを構築していくことを後押しするのが目的です。長時間労働の是正にもつながると期待されています。
今後の対応
働き方改革が注目されている現在、助成金を受け取れること自体が企業価値を高めることになるのは間違いありません。有能な社員にとって大きなモチベーションになる一方、採用で優秀な人材を獲得するためのアピールポイントになるでしょう。
2017年度予算案が可決すれば、より詳細な取り組みが明らかになりますので、助成金に興味のある経営者は情報の確認を怠らないようにしたいものです。
注意したいのは、くれぐれも形式だけを整えたような成果型賃金制度としないことです。働き方改革は現在、メディアでの報道も多く、従業員は自分が勤めている会社がどんな対応を取るのか注視しています。助成金を受け取ることができても肝心の運用が「仏作って魂入れず」だと、社員のやる気は削がれてしまうかも知れません。
助成金は決して「ご褒美」ではなく、あくまで自社の従業員の働きやすさの改善と、業績の向上を目指した制度設計と導入のためにかかるコストを国が負担してくれるものである、ということを忘れないようにしましょう。
経営者の本気度が問われています。
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