中小企業を襲う人材と労働の「5重苦」とは? その5 不払残業の社会問題化

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(写真= wavebreakmedia/Shutterstock.com)

サービス残業という言葉がごく普通に使われていますが、賃金不払い残業は労働基準法違反となります。厚生労働省は解消に向けた取り組みとして2001年に「労働時間適正把握基準」を発表し、遵守徹底に努めてきました。しかし、15年以上たった今でも残業の不払い問題は解消していません。また、2017年以降には、不払い残業の返還訴訟が社会問題になると言われています。

「不払い残業代返還請求」が司法書士事務所、弁護士事務所のビジネスに

消費者金融法の改正が行われ、多くの過払い金返還請求が2017年に時効を迎えます。過払い金返還請求とは、消費者金融やクレジット会社のキャッシングで、利息制限法の上限金利に違反する高い金利で貸し付けを受けていた場合に払い過ぎた利息を取り戻すための請求です。企業経営とは何も関係ないように思う人もいるでしょう。

個人では消費者金融やクレジット会社に対して過払い金返還請求ができない場合がほとんどであり、実は多くの司法書士事務所や弁護士事務所がこの返還請求を積極的に行っており、倒産する消費者金融もあるほどです。

さて、この訴訟の多くが時効を迎えることになりますが、これまで返還請求を行ってきた両者にとっては大きなビジネスを失うことになります。そこで、次に考えられるのが、「不払い残業代返還請求」です。多くの司法書士事務所、弁護士事務所が厚生労働省の取り組みによっても減ることのなかった、賃金不払い残業代返還請求を新たなビジネスとして捉えていると言われています。

実はすでに、不払い残業代返還請求の訴訟ラッシュは始まっています。「不払い残業代請求」でWeb検索をすると、たくさんの司法書士事務所や弁護士事務所がヒットします。これは、すでに不払い残業代返還請求をビジネスとしている事務所があることを示しています。

不払い残業代返還請求とは

不払い残業代返還請求とは、その名の通り、残業をしたにもかかわらず割増賃金が払われていない事実があった場合に、その不払いとなっている残業代を過去にさかのぼって支払ってもらうように請求をすることです。

不払い残業代返還請求をビジネスとしている司法書士事務所や弁護士事務所のwebサイトを見ると、訴訟は成功報酬で、着手金はゼロとなっているところがあります。また、付加金は2倍となっています。「不払い残業代の2倍まで取ります。遅延損害金は14.6パーセント」とまで明記されています。実際、内容証明郵便のひな形をワンクリックで印刷できるなど、こうした訴訟は一般の人にとっても、すっかり普通のことになっているのです。

弁護士や司法書士がついて、過去2年分にさかのぼって、1分単位で厳しく試算されることになるのは企業にとってかなり頭の痛い問題だと言っていいでしょう。労働時間管理を完璧に実行している会社というのは意外に多くありません。

この動きに対応するための重要課題は残業時間の削減

所定内労働時間以上働いた場合、それに対してきちんと残業代を払ってもらうのは、労働者の当然の権利であり、支払うのは企業側の義務です。それを履行していない企業に対して、返還請求というメスが入るのは、ふたたび労働者に仕事のやりがいを与え、職場への愛着を持ってもらうことにつながるなど、企業にとってもプラスの方向に向いていくという見方もあるでしょう。

しかし、大勢の労働者から過去の不払い残業代を一括して請求された場合などは、事業計画や取引先への信頼にも深刻な影響を与えかねず、企業経営者にとって大きなリスクとなるでしょう。こうした動きに備えていくという意味でも、残業時間を削減していくことは重要になります。

対策は生産性向上と正当な人事評価制度

残業時間の削減は、政府の働き方改革のひとつであり、日本の国家戦略でもあります。残業時間の削減で必要になるのは、今まで以上に従業員の生産性を上げていくことです。そのためには、正当な人事評価制度を導入することが求められます。従来型の人事評価制度ではなく、さらに踏み込み、従業員の動機付けができるような正当な人事評価制度がきちんと運用されていれば、業務災害のリスクを抑えることが期待できるといえるでしょう。

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