ブラック企業大賞実行委員会は2018年12月5日に、2018年のブラック企業大賞のノミネート企業9社を発表しました。また、12月23日に「ブラック企業大賞2018」の発表・授賞式が東京都内で行われ、三菱電機が対象に選ばれました。ウェブサイトや会場での投票数による「WEB投票賞」(市民投票賞)は、事務次官による女性記者へのセクハラが問題となった財務省が選ばれました。
「ブラック企業」は、ここ数年さまざまなメディアで取り上げられて社会的に注目されています。2018年も世間をにぎわせた企業や団体が大賞にノミネートされています。
「ブラック企業大賞」とは
ブラック企業大賞とは、大学教授やルポライター、弁護士などで構成される「ブラック企業大賞企画委員会」がブラック企業を定義し、いくつかの観点から具体的な企業を毎年ノミネートしていくものです。ブラック企業大賞では、ブラック企業を次の2点で定義しています(以下、ブラック企業大賞ホームページより引用)。
・労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業
・パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)
ブラック企業を見極める指標は、セクハラ・パワハラ、いじめ、長時間過密労働、低賃金、コンプライアンス違反、育休・産休などの制度の不備、労組への敵対度、派遣差別、派遣依存度、残業代未払いなどがあります。多くのブラック企業は、これらの問題点を複合的に持っています。
ブラック企業大賞の目的は、ブラック企業の個別の事例はもちろんのこと、ブラック企業を生み出す背景や社会構造の問題を広く伝え、誰もが安心して働ける環境をつくることにあります。
2018年に選ばれた企業とその特徴や傾向
2018年は9社の企業がブラック企業大賞にノミネートされています。ノミネートされた企業は、株式会社ジャパンビジネスラボ、財務省、三菱電機株式会社、株式会社日立製作所・株式会社日立プラントサービス、株式会社ジャパンビバレッジ東京、野村不動産株式会社、スルガ銀行株式会社、ゴンチャロフ製菓株式会社、株式会社モンテローザでした。
・株式会社ジャパンビジネスラボ
出産した正社員の女性を短期契約の契約社員などに転換させ、契約期限をもって雇い止めにするという、ここ数年目立ってきている新手の出産解雇の典型的な例のひとつとしてノミネートされました。
・財務省
「女性活躍」を標榜する政府の中枢機関でありながら、事務方のトップである事務次官がセクハラ事件を起こしました。報道後の政府の対応や発言も誠実さを欠き、社会に大きな悪影響を及ぼしたため、民間企業ではないのにも関わらず特別にノミネートされました。
・三菱電機株式会社
長時間労働による過労死という深刻な事故を起こしながらも、再発防止ができず、4年間で2人の過労自死を出し、短期間に長時間労働を原因とした労災が5件も認定されるという異常な状況が、ノミネートの理由です。
・株式会社日立製作所・株式会社日立プラントサービス
長時間労働とパワハラによって深刻な労災が発生したことと、外国人技能実習生に対する扱いの不適切さによってノミネートされました。
・株式会社ジャパンビバレッジ東京
支店長が出したクイズに正解した人にだけ有給休暇が与えられる「有給チャンス」と呼ばれるパワハラ行為を行っていました。また長時間労働が横行していたことなどがノミネートの理由です。
・野村不動産株式会社
裁量労働制が違法な長時間労働を誘発し、その悪用によって労災事故を引き起こした事例としてノミネートされました。
・スルガ銀行株式会社
壮絶なパワハラが繰り返し行われていました。さらにパワハラを放置することで蔓延し、不正融資の温床となって社会全体に害をおよぼした実例としてノミネートされました。
・ゴンチャロフ製菓株式会社
長時間労働と上司からのパワハラが原因であると労災認定された20歳男性の自殺が、近年社会問題となっている長時間労働とパワハラを象徴する事例としてノミネートされました。
・株式会社モンテローザ
外食産業で繰り返される長時間労働を原因とする過労死の事例としてノミネートされました。
人事評価制度の必要性
企業の最も重要な課題は人材の確保です。ブラック企業のような職場環境では人材の確保や定着は難しいでしょう。従業員に対するハラスメント行為、低賃金労働、残業代未払いなどは、企業を支える人材を損なう行為です。ブラック企業で横行するこれらの不正は、企業の持続的な経営を揺るがすことにつながるでしょう。
経営者と従業員の間で、フェアな関係性を構築することは企業経営でもっとも重要な点であると言えます。安定的な人材確保を行い、円滑な事業運営を進めるためには、会社の制度改革などに着手する必要があります。そのためのひとつの有効な策として、人事評価制度の導入があります。
ブラック企業の事例をヒントに対応策を実行する
ブラック企業の事例は、企業経営者や人事担当者にとってリスク管理の重要なヒントになります。常に起こりうるリスクとして対応策を実行していく必要があります。企業間での競争激化や、働き方改革など社会環境の変化によって、企業を取り巻く状況は刻々と変化しています。企業業績をアップさせるために、企業は事業戦略や人材戦略など多角的な視点をもってビジネスを進めていく必要があります。
組織運営において人材の重要性が一層高まる中、人事評価制度を中心とする働きやすい環境や仕組みを作ることは、企業の持続的な発展にとって最も重要なこととして認識する必要があるでしょう。
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