人事制度とは?今の時代に成果を出せる人事制度改革の5つのポイント

(写真=DeiMosz/Shutterstock.com)

2020年度から同一労働同一賃金が義務化され、正規雇用と非正規雇用の労働者に対する不合理な待遇差への是正が急務となりました。
また、コロナ禍の終息が見通せない中、テレワーク制度を常時導入する企業が急増し、今、時代にあった人事制度の改革が求められています。

その他、グローバル化や、HRテックの普及、労働人材の不足、ジェンダーギャップなども相まって、人事制度改革の必要性に迫られている企業も多いででしょう。
今回は、そもそも人事制度とは、その目的や意義、トレンドに合った人事制度改革のポイントについて紹介します。

人事制度とは

そもそも人事制度とは、企業の経営資源「ヒト・モノ・カネ」の中で最も重要と言われる「ヒト」を管理・統制し、活性化させるための制度です。
主な人事制度を構成する要素として、下記が挙げられます。

・労働管理制度
・人事評価制度
・人材活用制度
・等級制度
・報酬制度
・教育制度 など

このように、社員の採用から定着・活性化させるための人材に関わる様々な制度を総称して人事制度と呼ぶのです。

人事制度の基本要素とは

狭義での人事制度とは、等級制度、人事評価制度、報酬制度の3つの制度を指します。最低でも「この3つの基本要素を構築すること=人事制度を構築」になります。

等級制度とは

等級制度とは、従業員を能力・職務・役割などによって区分・序列化し、業務を遂行する際の権限や責任、さらには処遇などの根拠となる制度のことです。 また、その組織がどのような人材を必要としているのかの指針にもなります。
主に、下記3つが代表的な等級制度です。

基準 特徴
職能等級制度
メンバーシップ型
能力(人) 仕事を通じて能力が蓄積され成熟していくことを前提とする
職務等級制度
ジョブ型
職務
(ジョブ)
属人的要素は排除し、ジョブ(職務)の価値のみを査定
役割等級制度
ミッショングレード制
役割(使命) ジョブ(職務)だけでなく役割を持つ本人の能力も考慮する

人事評価制度とは

人事評価制度とは、企業が定める指針に沿って、業務成果・業務プロセス・スキルや能力・勤務態度など従業員を評価する項目・方法を定めた制度のことです。
評価制度には主に、主に能力評価、業績評価、情意評価の3つから構成されます。人事評価制度は等級制度とこれから説明する報酬制度と連動するのが理想でしょう。
人事評価制度によって評価された内容を基に、従業員の処遇や報酬、配置などが決められ、育成にも活用されます。

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報酬制度とは

報酬制度とは、等級と人事評価の結果をどのように報酬として反映するかを定める制度です。報酬は主に、給与(賃金)と賞与とに分けられます。
報酬制度はその性質から、どのような等級制度、人事評価制度を構築するかによって大きく影響を受けるでしょう。また、日本では、高度経済成長期に導入された年功序列の習わしが未だに根強く残る企業が多いのも特徴です。

トレンドの人事制度とは?人事制度改革が急務

ITの革新によりビジネス環境は急速に変化を迎えるようになりました。また、同一労働同一賃金の義務化、テレワーク導入による社員の働き方の多様化などにより企業は今、人事制度の改革を求められています。

日本の人事制度は、メンバーシップ型雇用、別名で日本型雇用というシステムによって古くから構築・運用されてきました。
メンバーシップ型雇用とは、年功序列、終身雇用、新卒一括採用などが前提とされるシステムで、それを人事制度にも反映。

しかし、今の社会状況でメンバーシップ型雇用を前提とした人事制度は、スピードの面でも人材に能力を発揮させるという点においてもデメリットの多いシステムです。

そのため、現在日本では、従来から欧米などで主流とされてきたジョブ型雇用を一部取り入れたり、ミッショングレード制を導入したりする企業が昨年から増えてきています。成果・そこに至るまでのプロセスをはっきりとさせ、適切に評価できる人事制度再構築が急務となっているのです。

人事制度改革の6つのポイント

社会環境の変化が激しい昨今、生き残っていくためにはそれらの動きと自社の人事課題を見据えて人事制度改革を行う必要があります。そのために、人事制度改革で必要なポイントをトレンドも踏まえ、以下6つ紹介します。

1.等級制度の見直し

まずは、根幹となる等級制度から見直しを行いましょう。
前述の通り、日本では未だに「職能等級」と呼ばれる、勤続年数が長くなれば、それだけ職務を遂行する能力が高いと定義付ける等級制度が一般的です。

等級には、ジョブ型雇用である仕事の成果に対しての職務等級や、ミッショングレード制である役割を果たしているかで等級が決まる役割等級などがあります。

自社の人材にどのように活躍してほしいか、どういった仕組みが浸透しやすいか検討の上、変革していきましょう。
まずは、中途採用者、技術職、幹部など部分的に取り入れるのもの手です。

自社の人材にどのように活躍してほしいか、どういった仕組みが浸透しやすいか検討の上、変革していきましょう。
まずは、中途採用者、技術職、幹部など部分的に取り入れるのもの手です。

2.人事評価制度と報酬制度の見直し

等級制度の見直しと併せて、人事評価制度・報酬制度を見直します。
等級制度を成果の有無や役割を果たせたかで昇給するシステムに合わせて、人事評価制度も、年功序列型ではなく結果を基に評価する指標を含まなければなりません。

ただし、成果だけで指標づくりするのではなく、目標管理制度やコンピテンシー評価(行動評価)なども加味し、社員のやる気がアップする仕組みを構築することが重要です。

次に、そういった評価がしっかりと反映されるよう、昇給シミュレーションなど実施し報酬制度を再構築しましょう。

3.クラウドシステムによる人材の可視化

上記の仕組みを構築した後、実際に運用するためには、効率的に適切な人材を採用・配置・評価するためには必要なデータの収集と管理が必要です。

勤怠・履歴書・人事考課・配属履歴・研修の受講実績・スキル・社内コミュニケーション情報・メンタルヘルス情報など、従業員に関するデータをバラバラに管理するのではなくクラウド上で一元管理。

これにより、どの人材がどのような能力があるのか、各個人の成果や役割がどのようなものなのか、どのような状態なのかなど人材の可視化を図ることができます。

4. 人事評価における曖昧さの排除

人事評価は、従業員にとってモチベーションを左右する大きな関心ごとです。

実際にリクルートマネジメントソリューションズが人事評価制度を導入している企業の社員を対象に行ったアンケートでは、人事評価制度を重視している人が約8割おり、半数ほどが人事評価制度に不満を感じています。そして、その不満の理由は評価の「曖昧さ」でした。

何を持ってして評価するのか、具体的な評価ポイントは何であるのか、事前に十分な告知と明確な評価基準で適切で公平感のある評価が可能になれば、従業員のモチベーションアップやエンゲージメントの向上にもつながります。

人事評価制度・システムを再構築する際には、「曖昧さ」を如何に排除し、公平性を保つかを意識して仕組みづくりを行いましょう。

5. HRテックによるAI機能を活用

HRテックの発達によって、AIを活用した便利なクラウドシステムが登場するようになりました。

例えば、「AIによるピープルアナリティクスでエントリーシートの合否を判断する」、「社内のハイパフォーマーを様々な角度から分析し、その傾向をつかむことでハイパフォーマーを増やす」、「センサーを利用して従業員の行動データから数値化された幸福度を計測して成果を高める」「個人が目標設定する際に、問題点を指摘する」などの事例がすでに存在しています。

こういった機能のサービスがあることも踏まえて、人事制度構築に役立てましょう。

6. プロフェッショナルなAI人材の採用と教育制度の変革

AI とIoTの普及が加速し、今後はこれらテクノロジーによって企業競争力が左右されます。

そのため、AIや IoTなどの先進のテクノロジーを理解し、価値ある問題を見つけ解決するためのアナリティクスの知識や、ビジネスモデルの変革ができるプロフェッショナル人材の採用・教育制度の構築が重要になってきます。

日本企業では特にプロフェッショナルの育成が不得手と言われています。新卒一括採用の見直しや、技術職採用を念頭においた人事・教育制度の変革が求められるでしょう。

自社にあった人事制度改革を進めよう

人事評価制度だけでもいくつもの方法があり、人事制度改革の必要性を感じていてもどこから手をつけていいかわからない企業も多いことでしょう。

人事制度の改革は、等級制度、人事評価制度、報酬制度の仕組みを複合的に、かつ自社にあった形で運用が進むように設計する必要があります。

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