ワーク・ライフ・バランスの意味とは?企業のメリットや取り組みのポイント

(写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を聞く機会が、最近増えています。このワーク・ライフ・バランスとは、仕事と生活の調和を保ち、多彩な人材が働きやすい環境作りを目指すことなのです。

社員が健康を保ち、リフレッシュしたり、キャリアアップのための時間を見出すほか、女性の離職率を下げ、人材を確保する重要性に関心が集まっています。

大手企業を中心にワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むケースが目立つようになったのは、企業の成長にとって不可欠だからです。その経緯や目的、背景などを見てみましょう。

ワーク・ライフ・バランスの定義とは?意味を分かりやすく解説

ワーク・ライフ・バランスの意味を一言で説明すると、 「仕事と生活の両立を個々人の希望するバランスで実現すること」 です。

内閣府が提示している定義をまとめると、

「老若男女誰もが仕事上の責任を果たしつつ、結婚や育児をはじめとする家族形成のほか、介護やキャリア形成、地域活動への参加等、多様なライフスタイル・ライフステージに応じた希望を実現できるようにすること」

であるといえるでしょう。

出典:仕事と生活の調和とは(定義) – 「仕事と生活の調和」推進サイト – 内閣府男女共同参画局

ワーク・ライフ・バランスの歴史|働く女性のために欧米から世界へ

「ワーク・ライフ・バランス」という考え方は1980年代以降、欧米を中心に働く女性のために、世界中へ広がりました。

日本では内閣府が「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を定め、経済成長に欠かせない取り組みとして積極的に推進。

 国民一人ひとりが、やりがいや充実感を感じて働き、仕事上の責任を果たし、家庭や地域で子育てをし、中高年期など人生の各段階で多様な生き方を選択、実現できる社会を目指す としています。具体的には、次の通りです。

  • 働く機会を得て、経済的に自立できる社会
  • 健康で豊かな生活のため、時間を持てる社会
  • 多様な働き方や生き方を選べる社会

例えば、企業の戦力だった女性社員が結婚や妊娠、出産後も働ける環境を整えれば、人材の流出を防ぐことになります。

日本企業では、長時間労働による、仕事と生活の両立には程遠い労働環境が問題視されています。ワーク・ライフ・バランスに配慮した「働き方改革」こそが今、求められています。

ワーク・ライフ・バランスが取り組まれる背景

日本でも新たに「ワーク・ライフ・バランス」への取り組みが始まっています。企業にとって、今後の経済成長に不可欠とされる背景には、1990年代以降、高度成長期を支えてきた終身雇用制度で社員の生活が守られてきた社会環境の変化や現代社会が抱える課題が挙げられます。

雇用の流動化

バブル崩壊後の長引く景気の低迷で、企業間の競争が激化。生き残りをかけたコスト削減で非正規雇用を増やし、若年層は就職氷河期を迎えるなど、経済的に自立できないケースが顕著化しました。子育て環境も変わらず、女性が仕事と生活を両立することが難しい社会のままです。

働き方や労働への価値観の変化

終身雇用や年功序列から成果主義へ移行したことで、安定した収入や就労を見込めない状態に陥りました。働き方や労働への価値観も変化し、個人が求める仕事や生活の豊かさも変わりました。

労働人口の減少

少子高齢化による労働人口の減少は、経済成長を阻害。女性の社会進出を期待しながら、現実には出産や育児と仕事の両立は極めて難しいという状況で、スキルのある女性が会社を辞めざるを得ないケースは依然として残されています。

長時間労働の増加

正規と非正規という社員の二極化が進み、正社員に負担がかかる長時間労働の是正が課題。今や長時間労働は過労死を招くなど、早急な「働き方改革」を推し進める背景にもなっています。

ワーク・ライフ・バランス向上による企業のメリット

適正な労働力を保ち、生産性を向上させることが企業の成長には不可欠です。そのために、社員が働きやすい環境を整えることがワーク・ライフ・バランスなのですが、次のような企業の成長という利点があります。

ダイバーシティの活用

女性の視点を活かしたサービスや商品は、今や企業にとって欠かせません。女性が仕事と家庭を両立できる職場環境が整えば人材をキープでき、多彩な価値観やキャリアを持つ人材は企業の競争力アップに繋がります。

優秀な人材確保と離職率軽減

ワーク・ライフ・バランスに取り組む企業は採用面でも有利で、仕事と生活が充実し意欲が高まれば、業績アップや離職率の軽減ともなります。

生産性向上と残業時間の削減

欧米に比べて長時間労働の割に生産性が低いと言われている日本ですが、ワーク・ライフ・バランスで業務を見直して生産性がアップし、残業の削減となっています。

ワーク・ライフ・バランスの現状と課題

ワーク・ライフ・バランスという言葉自体は一般にも広く知られていますが、現状を見ると十分に実現されているとはいえません。

内閣府による『企業等における仕事と生活の調和に関する調査研究報告書(平成30年)』の調査結果では、 男女ともに「仕事よりも家庭を優先したい」と考えている一方で、実際の職場では仕事が優先されていると回答した人が多い ことが示されています。

つまり、現状ではまだまだ、仕事と生活の両立を個々人の希望するバランスで実現できていないといえるのです。

出典:「仕事と生活の調和」推進サイト – 内閣府男女共同参画局

ワーク・ライフ・バランスを充実させるための具体的な取り組み

ワーク・ライフ・バランスに取り組んでいる事例には、次のようなものがあります。

育児休暇や介護休業の充実

育児や介護を理由にこれまで通りの働き方が選択できなくなるケースは少なくありません。これらは女性からのニーズが高いといえますが、育児や介護の担い手は女性だけではありません。

特に男性社員の育休取得促進は、男性のワーク・ライフ・バランスを高めるだけでなく、女性の活躍をさらに促すという点でも重要なポイントとされています。

短時間勤務やフレックスタイム制の導入

ライフスタイルの変化によって正社員としてフルタイムでの勤務が難しくても、「働く時間がまったく取れないわけではない」「短時間でもいいから仕事がしたい」というケースもあります。

育児休暇や介護休暇などの休暇制度と併せて、個人の希望に応じて勤務時間や日数をフレキシブルに選択できる制度もニーズが高まっています。

長時間労働の是正(業務の効率化)

労働時間の長さは世界的に見ても日本企業の大きな課題であり、ワーク・ライフ・バランスを実現する上でも障壁となる要素です。

ただし、長時間労働が常態化しているケースでは、単純に残業を削減しようとすると業務が回らず、売り上げにも影響を及ぼす恐れがあります。

ここで必要なのは、無駄を洗い出して業務フローを効率化し生産性を高めることです。長時間労働による成果創出をよしとしない評価制度の構築も必要でしょう。

IT化によるテレワークの導入

時間や場所にとらわれず働けるテレワークは、ワーク・ライフ・バランス実現に大きく貢献します。「育児や介護によって出勤は難しいが、在宅なら働く時間を確保できる」といった事情を持つ社員の希望を叶え、離職を防ぐことにつながります。

企業が社員のワーク・ライフ・バランスを実現するためのポイント

ワーク・ライフ・バランスへの取り組みが奏功している企業には、次のような共通点があります。

業務の見直しと新ルール

多くの社員はワーク・ライフ・バランスを実現したくてもできない現状があります。つまり、それを阻む職場環境を改善する必要があるのです。

業務フローの見直しによる生産性の向上や、時間外労働削減や休暇取得などに関するルールを設定しましょう。

経営トップの固い意志

業務フローの見直しは現場レベルで行うことですが、これまでのやり方を変えて状況を改善させることは簡単ではありません。

 まずは経営トップがワーク・ライフ・バランス向上に取り組む強い意志を全社に示し、具体的な計画を提示しましょう。 このためのプロジェクトチームを編成してトップ主導で推進していくことが求められます。

担当部署と管理職の意識改革

現場レベルで業務フローや生産性に課題がある事実を理解し、改善する意欲があるなら、すでに実行されているはずです。

現状ワーク・ライフ・バランスが実現されていないのなら、その担当部署や管理職の意識改革が先決だと心得ましょう。

進捗状況の可視化

従来のやり方やルールを変えようとすると、当初はどうしてもスムーズに進まず問題が発生します。また、検討した施策を実際にやってみたらうまくいかないということは往々にしてあります。

計画の進捗状況を項目ごとに可視化し、何がどこまで進んでいるのか、どこに問題があるのかを把握しながら、PDCAを回していく意識を持ちましょう。

人事評価制度との整合性

ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むには、育児休業や短時間勤務を適正に評価するルールを決めておく必要があります。ワーク・ライフ・バランスを利用しない社員との公平性も大切です。

ここで重要となるのが、 絶対評価など客観的で適切な人事評価制度の導入 です。

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ワーク・ライフ・バランスの実現を意識した人事評価制度の改善をお考えの担当者様は、ぜひ参考にしてみてください。

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