株式会社トミソー様
- 事業内容
- 住宅・店舗・店舗併用住宅の設計施工 不動産
- 従業員数
- 22名
- 設立
- 昭和29年4月
- 所在地
- 富山県
- 課題
- 納得感のある評価と成長を促す仕組みを作りたい
今回は、代表取締役の木村嘉秀様に、お話を伺いました。
※インタビュー内容は、2023 年1月18日取材時のものになります。
人事評価制度を導入された背景を教えてください。
私が社長に就任する前は、人事評価制度や給与テーブルが無く、賞与や給与は当時の社長が、「この人は頑張っているから○○円上げよう」と、感覚的に判断していたんです。社員からすれば、どう評価されているのかが分からない状態で、何を頑張れば良いのか分からない状態だったと思います。社員が評価に納得でき、成長をしていくためには、このままではいけないと思いました。
最初は、本を読んだり、セミナーに参加したり、試行錯誤しながらExcelで人事評価制度の運用を始めました。年に1回の評価のための面談をして、給与の決定をするような制度でしたが、制度を作った私ですら、「このやり方で良いのか?」「面談はどのように進めればいいのか」など、自信が持てませんでした。運用を続けたところで社員とって良い影響があるのかも不安でしたし、社員からの不満も募っていたと思います。ただ、人事評価制度は必要だと思っていましたから、あしたのチームさんを紹介してもらい、セミナーに参加したことがきっかけです。成果だけでなく、プロセスを評価できる点や、コンピテンシーの項目を設定することで、私が社員に何を求めているのかが伝わり、社員にとっても何をすれば評価されるのか、明確になる素晴らしいシステムだと思いました。導入している企業の中には有名企業もあり、「これは日本で一番の人事評価システムだ」と思い、導入を決意しました。
人事評価制度を運用していく中で苦労したこと、また、その局面をどのように乗り越えたのかを教えてください。
導入当初、運用に慣れるまでが大変でした。
以前は評価のために年に1度だけ面談していましたが、導入後はあしたのチームさんの提案通り評価期間を3か月に設定して、毎月のように面談するようになりました。「こんなに大変なことやって何か変わるのかな?」と私自身も半信半疑の状態でしたが、当時はあしたのチームさんの担当コンサルタントがスケジュールを組んで、期日に間に合うように「中間面談進んでいますか?」「評価進んでいますか?」など細かくリマインドもしてくれたので、半ば強制的に運用を進められました。中には、「これって強制なんですか?」と質問してくる社員もいましたが、担当コンサルタントが管理してくれていたので、面談が進んでいなければ怒られます。(笑)嫌でもスケジュール通りに実施せざるを得ない状況でした。
定期的な面談を繰り返すうちに「話すって良いな」と社員たちも実感できるようになり、運用を始めて1、2年経った頃、面談が当たり前のこととして社内に定着しました。社外の立場として、あしたのチームさんが入り強制的に運用を回してもらうことは、運用を定着させていくうえで必要だったと思います。
人事評価制度を導入後、どのような効果を感じていますか?
導入して6年目となった今振り返ってみると、会社の理念に沿った行動ができる社員が集まり、同じ方向を向いて周りに良い影響を与えられる社員が揃う会社になってきました。行動目標の項目は、私からの社員に対するメッセージであり会社として目指していく方向性なんですよね。それが受け入れられない人は自然に去っていき、会社の理念に沿った社員だけが集まる。よくできたシステムだなと思います。
弊社は人事評価制度を導入するタイミングで給与テーブルを設計し、新たに等級・号俸を設定しました。スキルや資格に応じて全体的な給与を見直したため、降給した社員もいました。基本給としては降給ですが、いきなり給与を下げるのではなく、3年間を猶予期間として調整給で差額分を支払うようにしていたんです。私としては3年の間に成長して、元の給与もしくはそれ以上の給与額を目指してもらいたくて、それも伝えていたのですが、残念ながら退職を選んだ人もいました。
私は、優秀でなくても周りに良い影響を与えられる人を理想の社員像としています。行動目標の全社共通項目では、そのような人を目指してもらえるように設定しているので、いくら優秀で個人成績が良くても周りに良い影響を与えられる人でなければ評価が下がり、そこに不満を感じる人は辞めています。そんな中でも嬉しい出来事がありました。
経営が赤字になりそうな危機的状況を、社員たちの想像以上の頑張りで乗り越え、昨対を上回る営業利益が出たんです。びっくりですよね。(笑)
昨年は、現場を任せていた課長が退職し、仕事を受ける数も規模も縮小せざるを得ない状況で、予算も数値目標の達成も難しくなりました。このことで、残された社員の給与が下がり、モチベーションが低下するような事態は避けたかったので、赤字覚悟で予算や数値目標項目の尺度を大幅に下方修正しました。しかし、残された社員たちは大きく成長し、いい意味で私の予想を大きく裏切ってくれました。下方修正が不要なほど良い結果を出してくれたので、数値目標項目の評点も上がって給料も上がりました。
経営数字は全社員が把握していましたから、社員からすると一人退職したからといって、赤字覚悟で予算を下方修正したことに納得いかず悔しかったのかもしれません。人が減った分、営業職の社員は1人当たりの商談の数も増えて、さらに忙しくなりました。その動きを見ていた別の社員は、クラウドに登録された次の商談日程を確認し、それに間に合うように先回りして見積作成を進めてくれました。上司が指示を出さなくても、それぞれの社員が勝手に役割分担をして主体的に仕事をするようになったんです。
他にも、若手社員がこれまでの経験値では考えられないくらい大きな規模の現場に自ら志願し、見事やり切ってくれました。先輩達にはより大きな規模の現場に入って欲しいから、自分はこの規模の現場を頑張る。そう決意しての行動でした。以前であれば、年末になると仕事量を調整するため受けない仕事もありましたが、去年は断らず取るようにしていました。このような社員一人ひとりの自主的な頑張りの積み重ねで、昨対越えを達成できました。私も、出来る限りの精一杯で社員の頑張りに報いたい。そんな気持ちで、最低限の営業利益を残して賞与として利益を還元しました。
会社を良くするのは、優秀な人ではなくて周りに良い影響を与える人。このことが証明されたような出来事でしたし、周りに良い影響を与えられる社員が集まっている状況を作り出せたのは、あしたのチーム®を導入したことが大きく貢献していると思います。
導入して約5年間、3か月の評価期間で運用を続けてきましたが、リーダー会議で話し合い、今期からは評価期間を半期に変更しました。
変更した理由は2つあります。一つめに、弊社の事業ですと、四半期の評価にすることで極端な評点差が出やすいことが明らかになりました。弊社のように、住宅などの1案件が長期に渡る上に単価が高く、お客様や気候によって完成時期のずれる可能性が高い場合だと、数値目標の評点に大きく影響してしまい、社員の頑張りとは関係なく評点が極端に下がってしまうことが起きてしまいます。社員のモチベーション維持のために、変更が必要だと判断しました。
二つめに、リーダー層が育ってきて一次評価者を各リーダーに任せられるようになったからです。これまでは、代表の私一人で全員を評価していましたから、日々の細やかなコミュニケーションを取ることが難しく、社員の様子や成長具合を知るためには1か月半ごとの面談が良い機会となっていました。リーダーは、日頃から部下と密にコミュニケーションが取れていますので、面談の頻度を少なくしても問題ないと判断しました。
これからも改善を重ねながら、社員にとってより良い制度で運用を続けていきたいと思います。
今後、人事評価制度の運用により、実現したいことを教えてください。
実は今、会社として大きな目標を掲げています。それが何なのかはお伝え出来ませんが、かなり難易度の高い目標で、達成のために人事評価制度の運用も見直しました。
弊社は、今年が創業70周年を迎えるため、昨年1年間が大きな変革の年でした。有難いことに業績は右肩上がりで、人事評価制度の運用も社内に定着しています。正直このまま何も動かなくても会社は大きく傾くことはなく、少なくとも私が定年するまでは業績は安定していたと思います。
しかし、社内アンケートで、社員から「今も良い会社だけど、もっと良い会社にしていきたい」という前向きな意見が上がってきたこともあり、会社としても、もっと高いところを目指す決意をしました。
会社として難易度の高い目標を掲げたことで、これまで、「これくらいはいいだろう…」と、見て見ぬふりをしていたことにも向き合いました。具体的には、行動目標の最高点である4点の評価基準や、目標内容も厳しくし、評価者も再編成したんです。達成するのがかなり難しい目標なので、「○年後の会社の目標達成のためには、このレベルの目標はクリアしないといけないよね」という基準値を社内で大きく引き上げました。弊社は、私自身も取締役も、評価シートを作成し、全社員に行動目標を開示しています。私のことは、誰も評価はしてくれませんが、誰よりも高い難易度の目標を示しておくことで、社員に「一緒に頑張っている」と思ってもらいたいですし、全社員に宣言したからには、有言実行となるように達成できるように行動しています。行動目標のレベルが全体的に上がり、当然私自身の目標もとてつもなく高難易度になり、更に気を引き締めて頑張っているところです。(笑)
また、会社の理念を体現している社員を評価者に抜擢し、逆に理念とは違う方向性で動いていた評価者は降格しました。これは、思い切った改革の一つでしたが、正解だったと思います。評価者に抜擢された社員は、責任を感じ、以前よりも頑張ってくれていますし、降格した社員は、全員が納得してはいないと思いますが、「自分の何がいけなかったのか」を、考えるきっかけになっているようです。逆に、部下育成を任されていた評価者の時よりも、今の立場の方が生き生きと自分の専門分野の仕事を全うしてくれている社員もいました。今回は降格にした社員も、“今”のタイミングではなかっただけで、いずれ評価者を任せられる人材となり、昇格してくれることを期待しています。
人事評価制度を導入する企業に対してのアドバイスをお願いいたします。
人事評価制度は、社員に社長からのメッセージを分かりやすく伝えることができる良いツールだと思います。
あしたのクラウド®は、柔軟性があり色々とカスタマイズができて評価期間や評価内容も自由に変更して使えるので、会社のフェーズが変わっても使い続けることができます。評価期間や評価内容を変えたからといって、別のツールに変更する必要もなく、あしたのクラウド®で社員が入力する画面もほぼ変わらず使えるので、社員に余計な負担をかけることもありません。
社員情報や評価結果の管理にも便利で、評価結果はそのまま査定結果として給与増減をボタン一つで社員情報に反映できます。時間のない管理者にとっては便利な機能ですが、私は敢えて使っていません。査定結果の調整はしていないため、給与シミュレーション機能を使ってボタン1つで更新した方が効率は良いのですが、一人ひとりの給与情報を手入力で更新することで、「この人は今期頑張ってたから、これくらい給与上がって当然だな」「この人は、今回伸び悩んでしまっていたから、ケアしてあげないといけないな」など、社員の成長をゆっくりかみしめる時間が、私にとって大事だからです。
人事評価制度は、導入してすぐは効果や変化が分からないと思いますが、4、5年使ってみると、社員や会社の変化に気づいてくると思います。これから導入されるなら、会社の変化に応じてカスタマイズし、長く使い続けて欲しいです。