株式会社ファクト様
- 事業内容
- 一般労働者派遣事業/有料職業紹介事業/アウトソーシング (RPOサービス)/デイワーク求人サービス /イベント企画・制作事業 マーケティングプラットフォームサービス/人事向けハラスメント対策サービス/人事評価構築サポート /飲食業(焼肉店)/ パーソナルトレーニング事業
- 従業員数
- 25名
- 設立
- 平成19年8月29日
- 所在地
- 東京都
- 課題
- 評価制度に対する納得感の醸成
今回は、人事評価制度の運用を担当されている取締役の小林 陽介様にお話を伺いました。
※インタビュー内容は、2023 年9月13日取材時のものになります。
人事評価制度を導入された背景を教えてください。
弊社はあしたのチームさんが「あしたのクラウド®」を開発されるよりも以前に、人事評価制度への考え方に共感をしてあしたのチーム®のサポートを導入しました。
私はまだ入社していない頃ですが、当時の役員陣があしたのチームさんのセミナーを受けたことがきっかけだったと聞いています。当時のことは分かりませんが、あしたのチームさんの人事評価制度は、鉛筆なめなめで誰かの感覚だけで決まる評価ではなく、定量的な要素と定性的な要素を客観的に公正に評価できますし、行動を改善すれば成果につながるという考え方にも共感しています。
当時は制度構築というコンサルティング面のみのサービスで、クラウドシステムの提供がまだ無かったので目標設定や面談などの制度運用自体はExcelで行っていました。今思うと、全体的な集計や過去の内容を見返すことは難しかったと思います。あしたのクラウド®が開発されてクラウドに移行してからは、集計や過去の内容の振り返りもしやすく、楽に管理できるようになりました。
あしたのクラウド®は、人事評価制度の運用に特化したシステムなので、クラウドを使うことでより効率的で便利に運用ができるようになったと思います。
人事評価制度を運用していく中で苦労したこと、また、その局面をどのように乗り越えたのかを教えてください。
人事評価制度を運用するには多くの時間と労力が必要ですが、弊社が特に苦労したのは目標設定でした。
弊社では、明確な評価基準を持ち、さらには社員に前向きに目標に取り組んでもらために、行動目標は『明確に』『具体的に』『肯定的に』という原則で立てるように指導しています。
しかし、多くの社員は、そもそも行動を言語化すること自体に慣れていないため難しさを感じ目標設定がうまく進みませんでした。
社員が難しさを感じていた要因は様々ですが、そのいずれも評価者と被評価者がしっかりコミュニケーションをとり双方が納得するまで説明と確認を繰り返すことで解消することができました。
例えば、行動目標は、“数値目標(成果)を達成するために何をするか?”を言語化するものですが、社員は、その数値目標や尺度が現場にフィットしていないと感じていたんです。目指すべき数値目標に納得していないのに、それを達成するまでのプロセスを考えて言語化することなんて、確かにできないですよね。そこで私は社員と面談を行い、会社の方向性や今期の狙いなどを説明し「なぜこの数値目標が設定されているのか?」を伝えるためのコミュニケーションをとりました。
他にも、弊社が独自で設けている『明確に』『具体的に』『肯定的に』という3つのポイントへの理解不足が要因で、言語化に苦戦していたこともありました。『明確に』『具体的に』という2点については、より納得のいく評価にするために『目的は何で、どれだけの量をやるのか』といったように達成基準まで数値化して具体的にしてほしいという意図があり、『肯定的に』については少しでも前向きに取り組むために、「減らす」とか「辞める」とかネガティブな言い回しではなく「増やす」とか「始める」とか肯定的な言い回しにしてほしいという意図があります。そのような運営側の意図をしっかりと面談やコミュニケーションの中で社員に伝えることで、少しずつ社員の理解を促し、目標設定のハードルを下げることができました。
一方的な押し付けではなく、社員が納得できるようにお互いの考えをしっかり主張し議論することで、本当の理解と納得を深めることができたと思っています。
人事評価制度を導入後、どのような効果を感じていますか?
弊社で特に感じている効果は、『1次評価者の育成』と『社員の成長促進』です。
一つ目の『1次評価者の育成』についてですが、私自身、1次評価者になったことはとても大きな成長の機会でした。
評価制度の中間に実施する進捗面談では、「社員が目標達成するために、これからどうしたらいいのか」を私自身も考え、それを社員にナビゲーションするので、その度に“目標達成のためのノウハウ”が蓄積されていき、自然と目標達成スキルが向上しました。
さらに、評価面談では、社員への感謝や想いも込めた熱いフィードバックをしますよね。そのためにも日々メンバーの行動や考えをよく観察・考察するようになりました。人を見る目やフィードバックする技術が養われたと感じています。
1次評価者として指導や評価を行うのは大変ではありますが、とてもやりがいがあります。面談は体験型の研修みたいなもので、社員のやる気やモチベーションが高まっていく様子が見られるんです。面談の後は、社員がやる気やモチベーションが高まっている状態で部屋を出ていくので、その姿を見ることが何より嬉しいです。
2つ目 『社員の成長促進』については、人事評価制度を通して1次評価者と社員のコミュニケーション量が増えて質が上がったことが大きく貢献していると感じています。
評価制度には目標設定・中間レビュー・評価という3ステップの面談機会があり、それらの面談も社内の重要事項としてしっかり時間を確保して実施しますが、それとは別に「日報」でのコミュニケーションも行っています。社員には、日報で、「その日の目標に対してうまくいったこと」と「強化ポイント」を書いてもらっていますが、直属の上司は、それを必ず毎日確認してコメントを返しています。面談以外の場でも、人事評価制度を軸に進捗や気づきをお互いに共有することで、社員の成長を促すと同時に、1次評価者側も社員の成長に気づくことが出来るようになりました。
このようなコミュニケーションを通じて、社員の物事の見方や捉え方がだんだんアップデートされていくのを感じています。特に、評価期間の締めとなる評価面談での総評には、その変化が顕著に現れていますね。社員の総評コメントから、そのサイクルを経て当社の求めるものの見方や捉え方を理解してくれたな、とか、本人の気づきや成長を本人自身が感じてくれているなと思うことがあると本当に嬉しいですね。
ここまででお伝えした『1次評価者の育成』と『社員の成長促進』の2つとは別件ですが、社員と1次評価者のコミュニケーション量が増えることで、社員と会社の間の信頼関係が築かれているようにも感じています。
弊社は導入して約8年近くになりますが、今改めて振り返ると会社や制度に対して肯定的な印象を持ってくれている人が自然と会社に残っているように思います。評価制度を通して、会社が求めることを伝え社員の成長を促し、社員の頑張りを会社として正当な評価という形で感謝を伝える。この仕組みのおかげで会社の一体感が高まっているんだと思います。
人事評価制度を導入する企業に対してのアドバイスをお願いします。
人事評価制度は、運用し続けることが難しいです。なぜなら、労力に対して効果がすぐには現れないからです。
営業ツールなら2、3ヶ月後には成果が目に見えるかもしれませんが、人事評価制度は早くて1年、大体は2、3年後くらいに初めてその効果が感じられるものです。
まず、導入して全社員に評価制度が浸透するまで1年はかかります。2年目で社員が制度に慣れてきて、3年目になる頃に、ようやく社員が前向きに取り組めるようになったり、「やって良かった」と思える経験をしたり、“効果”を感じられるようになるんです。
それまでの間に、社員や経営陣までもが疑問や不満を持つこともあるでしょう。それに耐え金脈に当たるまで掘り続けるのが大変です。導入を決めたのなら、誰よりも社長自身が苦労の先にある効果を信じて掘り続けてみてください。
結局のところ、人事評価制度を導入して成功するためには、社長が納得し、本気で取り組むことが不可欠です。さらには、ナンバー2~4ぐらいまで巻き込んで一緒にやるといいと思います。
社長が変わらなければ会社は変わらないし、社長が本気でなければ制度が根付かないからです。これから導入される社長さんには、人事担当者と共に人事評価制度の価値を理解し、社内に浸透させる旗振り役を担ってほしいです。
人事評価制度は、運用し続けることできっと導入目的以上の想像していなかった副産物のような価値を社内にもたらしますし、会社や社員の成長のために非常に有効なツールです。その効果を得るためにも、経営者サイドがその価値を信じて掘り続ける覚悟をもって導入してほしいなと思います。