有限会社平田工房様
- 事業内容
- 木製家具・建具の製作
- 従業員数
- 20名
- 設立
- 1992年
- 所在地
- 沖縄県
- 課題
- 社員の努力に報いるため、 昇給基準を整備したい
人事評価制度を導入した理由
代表取締役 平田 浩克様
社員の努力に報いるため、昇給基準を整備したい
私は当社の3代目です。2013年に父から経営を引き継いだときは、1億円近くの累積損失を抱えていました。そこから必死に新規顧客を開拓し、約4年間かけて累損を一掃。
次は社内の基盤を固めようと、人事分野の整備に取り組みました。
当時は時給制で体系的な賃金制度がありません。
給与や昇給について、多くの社員が不満を抱えていました。彼らのがんばりに報いるため、まずは労務面の待遇を改善。賃金は月給制に変えたものの、昇給の仕組みが定まらない。
そんな時期にあしたのチームのセミナーに参加し、評価制度の導入を決めました。
もちろん、工場長や古参社員には相談しましたよ。
「人事制度にお金を使うくらいなら、一時金として社員に配った方がいい」という意見も出ましたが、最終的には判断が一致しました。
導入後の効果・成果
小さな改善を積み重ね、生産性が昨対比24.5%アップ
社員の自主性が育ち、職人1人あたりの労働生産性が昨対比24.5%アップしました。その要因は「内製額」という全社目標を前提にして、一人ひとりの目標管理を行ったからです。
内製額とは、受注金額から外注費用を差し引いた金額です。ウチは受注生産が基本なので、一時期に注文が集中すると外注せざるをえません。すると、売上高は増えても、粗利率が下がる。だから、営業職には繁閑の波を平準化して受注してほしい。職人たちには製作現場の効率を上げてほしい。そんな目標を具体化して追いかけた結果、生産性の向上が実現しました。
たとえば、限られた機械の使用スケジュールを調整して、1日あたりの生産量を増やす。捨てていた端材を有効活用して、木材の仕入れ率を改善する。単純ミスを減らして、時間と資材の浪費を抑える。そういった小さな改善を地道に積み重ねていったのです。
決して、社長の私が事細かに指示したわけじゃありません。
目標を達成するための方法は社員自身が考えてくれます。
評価制度の導入から1年が経ち、「自分たちで段取りして、期日までに一定水準の製品をつくる」という気風が生まれてきました。
これは工場長がいちばん望んでいた変化です。
受賞部門の効果を上げた秘訣
制度運用のサポート役を選任。担当者の評価項目に盛りこむ
おもなポイントは3つあります。
1点目は社員を信じること。
木工職人たちは座学の研修を受けたり、書類を作成したりすることがありません。だから、評価制度の社員説明会が不安だったんです。
でも、いざやってみると、意外と素直に受け入れてくれました。おそらく、「会社が変わろうとしている」という期待を感じてくれたのでしょう。
2点目は上半期の目標と評価を甘めにして、ほとんどの社員を昇給させたこと。
最初の査定で「その通りにやれば給与が上がる」という成功体験を味わってもらったのです。その結果、新制度に半信半疑だった社員も前向きに取り組んでくれるようになりました。
3点目は運用のサポート役を決めること。
ベテランの総務担当者が各社員の日報提出を確認したり、定期面談の期日を通知したりしてくれました。
これらは個人の責任感に頼った行動ではなく、彼の評価項目に明記されたもの。もしも社長の私が口を酸っぱくしていたら、社員の反発を招いていたかもしれません。
現場トップの視点
工場長 崎原 剛様
職人の意識が向上。経験を血肉化して、業務効率を改善
評価制度を導入した当初は、現場から反発を受けましたよ。
ワケのわからない仕組みを勝手に決められて、なぜ自分たちが査定されるのかって。
でも、とりあえず1年間続けてみると、自身の行動や成果が評価されて、給料もちゃんと上がった。いまでは、不満の声が聞こえません。導入後の変化としては、職人たちの意識向上があげられます。
以前は与えられた仕事を淡々とこなすことが多く、次の仕事に経験を活かしきれないケースがありました。しかし、最近は一人ひとりが深く考えて、成功も失敗も次に活かせるように。工場長として嬉しいですよ。
また、当たり前のことを徹底できるようになりました。
整理整頓や日報の提出など、決められたことを守るようになったのです。結果として、日報に記されたミスを社内で共有できるようになり、同じようなミスが減少。
そんな積み重ねで生産性が向上し、内製額も増えました。
ただし、今期は全体の仕事量が少なかったので、外注費を抑制できた側面もあります。
真価が問われるのは、これからでしょう。
今後は受注を安定的に増やして、人事評価を通じた給与アップを続けたい。そして、みんなが安心して働ける会社になってほしいですね。