世界No.1のレシピ動画数を誇る『クラシル』の運営会社dely(デリー)。同社で人事を務める新田慶秋さんは、2017年4月に人事第1号として入社以来、社内制度や体制の整備に尽力し、採用も手掛けるなど、その手腕をいかんなく発揮しています。
インタビュー前編では、新田さんが手掛けたビジョン・ミッションの策定についてもお伝えしましたが、その他に新田さんが取り組んだのは、どのようなことなのでしょうか。後編では、成長フェーズにある企業に必要な人事施策のヒントとして、新田さんの取り組みをご紹介します。
【Profile】
新田 慶秋(にった よしあき)
dely株式会社 経営企画部 組織戦略・採用リーダー
インターンから新卒で中小企業経営支援・起業家支援を行う(株)ビジネスバンクグループに入社。HR事業の立ち上げ等を経験。新卒入社4年目、最年少で取締役に就任。2017年4月からレシピ動画サービス クラシル を運営するdely株式会社に人事第1号としてジョイン。実家は長野で6代続く味噌屋。
■2017年10月から、目標管理シートを全社員に公開
―前編では、delyの人事評価の仕組みとしてOKRを導入されていると伺いました。それをベースに、同社ならではの工夫を行っている点はありますか。
新田さん:いくつかのチューニングを行っていますが、象徴的なのはこの10月からスタートさせた、目標管理シートの公開です。従業員数が増えるに伴って起こり得る弊害は、縦割り型の組織構成がセクショナリズムを招くこと。もちろん、機能別組織は各々の専門分野に特化して高い成果を出しやすくなるのがメリットですが、同時に部署外のメンバーとの距離が生まれ、誰が何をやっているのか見えづらくなるというデメリットもありますよね。実は当社でも、メンバーの人数が増えるに従って組織間の連携やコミュニケーションが上手く取れないような事象が散見されはじめていました。お互いの状況が見えないと、配慮ができなかったり協力関係が築けなかったりしがち。そこで、今の一人ひとりが担っている役割や目標を全社員が共有できるように、公開へ踏み切ったんです。
―透明性を高めたことで、何か変化は起きましたか。
新田さん:まだ2ヶ月ほどなので大きな成果が出るのはこれからです。ただ、小さな変化は各所で起きていますね。たとえば、部署横断で取り組む仕事やプロジェクトはその効果が顕著。自分と関係のあるメンバーが、他にどんな目標を持っているのか分かりますし、追いかけている目標の大きさも一目瞭然。それを知っている前提があるかないかでは、コミュニケーションの取り方は随分違うようです。
―目標管理シートは、人事評価にも関わる部分ですよね。社内からの反対意見はなかったのでしょうか。
新田さん:これもビジョン・ミッション策定のときと同じなのですが、前提として人事が一方的に決めた訳ではなく、各組織のリーダー10数名が集まったリーダー合宿の場で決めたことなんです。もちろん、公開への懸念がなかった訳ではありませんが、きちんと議論をしたうえで方針を決定しましたね。このように、社内制度や体制に関する議論の場をつくったり、意思決定のプロセスをデザインするのも、人事の重要な役割だと思っています。
■ベンチャー企業こそ、社員のカルチャーフィットやフェアな環境づくりが大切
―新田さんが担っている人材採用の仕事は、急拡大する組織でかなり重要な役割ですよね。delyの採用で重視していることはありますか。
新田さん:これは当社が過去に失敗した経験も踏まえての結論なのですが、一言でいうと「delyのカルチャーにフィットしているか」を重視して面接を行っています。かつては、サービスやプロダクトの基盤を整えることを急ぐあまり、スキル偏重型の採用を行っていた時期がありました。ただ、いかに有能な人材でも企業のカルチャーにフィットしていない人を採用するのは、あまりにもリスクが高いというのが実感です。第一に、どんなに仕事はできても目指す方向性が違いすぎると、その存在や振る舞いが組織の混乱を招きます。また、事業コンディションが悪くなると急速にモチベーションが低下し簡単に離職してしまう。実は当社は『クラシル』誕生以前に2つの事業を立ち上げ、どちらも撤退しているのですが、その際も同様のことが起きたそうです。
僕たちがビジョン・ミッションを明確にしたのは、現メンバーに向けたものでもあると同時に、未来の仲間に向けたメッセージとしても必要だったんですよ。
―今後も積極的に採用されるでしょうし、まだまだ拡大フェーズの途上だと感じます。その過程において、人事として取り組まれる予定のことはありますか。
新田さん:未整備の部分はまだありますので、少なくとも他社で当たり前のことは導入したうえで、delyらしさを出していきたいですね。大切にしたいのは、社員にとって平等・フェアな環境。それぞれ異なる役割や経験を持つなかで平等に評価されるには、やはり成果や目標の大きさを重視した、よりシャープな制度へと進化する必要性を感じています。
―フェアとは裏を返すと競争環境とも言えますし、結果が出なければ報酬が下がってしまうこともありえますよね。そういった厳しい環境に身を置くことを、みなさんはどう感じていると思いますか。
新田さん:当社は平均年齢が27歳で80%が20代。代表の堀江自身も25歳です。これは何を意味しているかというと、ほとんどのメンバーにとって年功序列型の評価制度は経験がないんです。僕たちは子どもの頃から通知表の成績は絶対評価で育った世代。相対評価で昇進したり、給与が決まったりする方がむしろ不自然に感じます。だからこそ、OKRによって個人の目標と経営目標がシンプルに連動して評価される方が分かりやすい。結果を出せなければ報酬はそれなりだし、成果を出せば会社が応えてくれる。今の20代は、この環境を厳しいというより当たり前だと思っている人の方が多いのかもしれませんよ。
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