松本隆博の「ng!相談室」は、仕事が出来る人の行動特性である「コンピテンシー」を用いてお悩みを解決するコーナーです。ng!はno goodではなく「never give up!」。会社員、経営者を経てシンガーソングライターになった松本さんならではの視点からみなさんに金言を授けます!
百貨店のフロアマネージャをしています。アルバイトの学生から、子育て中のパートの女性、販売一筋でやってきたシニア層の男性など、色々な属性の人たちを統括する立場です。最近、20代の従業員への接し方に困っています。厳しくしているつもりはないのですが、接客について指摘をしたことで傷ついてしまったようで、若い世代が立て続けに退職してしまったのです。本当はタバコ休憩の頻度であったり、敬語の使い方であったり、気になることは他にもたくさんあるのですが、気を遣って言えずにいます。お客様ファーストなこの仕事。従業員に気を遣ってあるべきホスピタリティが実現できていないのではないかと葛藤中です。理想的な叱り方ってあるのでしょうか?
気持ち、めちゃくちゃ分かりますよ。僕も会社員時代、ついみんなの前で部下を叱ってしまったことがあって。その子は辞めていってしまいました。今でもその時のことを教訓にしていますが、叱りたくなったら「これは、彼彼女のためのアドバイスか?それとも、自分が気持ちよくなるためのエゴか?」と自問するようにしています。
組織論になってしまうんですけど、僕がかつていた銀行もそうだし、百貨店ももしかしたらそうかもしれないけど、昔僕たちの時代と言えば基本的には下から上に上がっていく構造ですよね。だから、トップは部下の業務を全部知っているのが当たり前で「見本を見せられる存在でいなければ」と思いがち。部下が思っている以上にマネージャーとしての自分の役割を大きく見せようとして、それが逆に自分で自分の首を絞めてしまっているんじゃないかと思うんですね。
でも、もうそういう時代じゃなくなってきている。専門職のスペシャリスト人材じゃないと対処できない難易度の高い仕事も増えてきており、部下の仕事を上司が代わりにできて当たり前なんて時代ではないと思うんですよ。
何が言いたいかというと、古くからある業界は特に変化を求められています。これからの百貨店を考えたら、組織のあり方も変わっていかなければいけないじゃないですか。
例え大企業であっても、ITベンチャーのような適材適所の考え方を取り入れて、部下に積極的に仕事を任せていく。だからマネージャーに必要とされる能力は「誰がどんなことが得意で、どの様に任せていけばよいか」を把握しておくことです。
ちょっと話が大きくなってしまいましたが、まずは目先のことも考えなくちゃいけないですよね。どう若い世代とうまく付き合っていくか……。昔、上司が僕にこんなことを言ってきたことがありました。「最近の若い子って●●だから、もったいないと思うんだよね」と。「最近の若い子」と一括りにするのはいかがなものかという議論は置いておいて、僕は今となってはその上司に感謝しています。なぜかというと、●●は明らかに僕のだめな言動のことだったから。直接指摘すると、反射的に歯向かってしまったりモチベーションを下げてしまったりということもあると思います。そんな僕のパーソナリティを汲んで、一般論に置き換えて話してくれた。そんな配慮をさせてしまったことが申し訳ないくらいでした。テクニックの一つとして、そんな方法も覚えておいてもいいかもしれません。
ハッキリ言って、今の若い世代の人たちと分かり合うなんて無理なんです(笑)。生まれたときからインターネットがあった世代なので、世界観が違って当たり前。それでも、そのアドバイスが「本当に自分の為を思って言ってくれてるのか、はたまたその上司の言わば自己満足や保身の為なのか」彼らはほんと敏感です。上司が自分の業績達成のために部下である私たちを動かそうとしているな、なんていう化けの皮はすぐに見抜かれてしまいます。大事なのは、本人たちを思って愛を持って接しているか。タバコ休憩の回数や敬語が正しく使えてるか?なんていう、叱る項目のボーダーラインを考えても無駄。それらは表面的な事柄にすぎません。
そして上司たるものこちらの世界を部下に押し付けないこと。部下が伸びるトリガーポイントは「自分自身で気付いたとき」です。彼・彼女が物事にアンテナを立て始めたとき、そのヒントを周りに散りばめておく。そんな余裕のあるマネジメントをしたいものですね。
上司は神様じゃありません!むしろ部下自らが相談に来るような、そしてその時にはそっとやさしく気付きを与えるような神父さん、それが理想だと思います。
相手の能力・強み弱みを正確に把握し、対応する力。今の時代は、苦手のない平均的なゼネラリストタイプより、得意分野においてずば抜けた能力を発揮するスペシャリストタイプの方が生き生きと活躍できる場が見つかりやすいです。しかし、20代のうちから自分の得意分野を理解できている若手社員ばかりではありません。相手の良い面を探り出し、そこを伸ばしていけるような人にこそ、マネージャとして次世代の人材育成を任せていきたいですね!
【松本隆博の「ng!相談室」シリーズ】
・ちんけなプライドなんか、捨てちまえ!~松本隆博の「ng!相談室」その1~
・若者よ、パワハラに負けるな!~松本隆博の「ng!相談室」その2~
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